▶今回の記事の中で興味を持った初登場の作品は2つ。
1つ目は韓国映画の「一人暮らしの人々」。本ブログで10年前「韓国でも「お一人様で外食もOK」の時代に突入か?」と題した記事(→コチラ)を書きました。その頃から<혼자>(ホンジャ.一人)をモトに、<혼밥>(ホンパプ.一人飯)、<혼술>(ホンスル.一人酒)、<혼영>(ホニョン.一人映画)のような新語が次々と生まれ、そんな人たちを<홀로족>(ホルロジョク.一人族)、さらには<혼족>(ホンジョク)と呼ぶようになっています。
また2020年の統計によると、韓国の全世帯の約30%が1人世帯とのこと。ソウルは約34%で、40年前に比べて16倍も増加しているそうで、今や社会問題化しているようです。そんな韓国で一人暮らしの方が気楽という若い女性を主人公にしたドラマです。※日本の1人世帯の比率は1995年が約26%で2020年が30%。ここでも韓国に「追いつかれた」というわけです。
2つ目は「アイダよ、何処へ?」。1974年に現在のボスニアの首都サラエボで生まれたジュバニッチ監督作品で、デビュー作「サラエボの花」(2006)同様自身の90年代の体験に基づく作品で今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされる等高い評価を得ています。その内容の焦点は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の中で1995年7月に起きた戦後最悪のジェノサイド(集団虐殺)とされる<スレブレニツァの虐殺>(→ウィキペディア)です。
日本公開は9月なので私ヌルボももちろん未見ですが、軍事的・政治的視点ではなく、多くの悲劇に見舞われた人々からの視点は貴重で、ぜひ早く観てみたいものです。ただ、大局的に見ると西欧諸国、NATO、アメリカ、国連軍、そして本作の製作に関わった(下掲の)諸国やNATO、アメリカ等の側も全然問題がないわけでもなさそうですが・・・。合作に名を列ねている諸国は、やはり反セルビア、反ロシアなんですね。作品自体に対する評価は別とはいえ、それでも一般論として映画作品の政治的意味はつきまとうことは念頭に置く必要はあるでしょうね。
▶この1週間で観た映画は次の2本です。
・「茜色に焼かれる」★★★★★ (コロナ下でも公務員や年金生活者の生活はあまり変わってないと思われますが、さすがに石井裕也監督、厳しい状況下にある人々にスポットをあてて問題提起をしてます。7年前の高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違い事故(!)で夫を亡くした母(尾野真千子)と中学生の子の2人家族、もっとひどい生い立ちを抱えつつ現実の問題に直面している女性等。「それでも何で生きようとするんだ」という風俗店の店長(永瀬正敏)の口から発せられる言葉は彼らにとっては決して極端なものではないのでしょう。大体は平穏無事に日々を過ごしている私ヌルボにとって、登場人物やストーリーが少し極端な感もありますが、そう感じるのも立場の違いかどうか不明。尾野真千子さんの神懸かり的(?)熱演に☆1つ分をオマケしました。)
・「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」★★★★★ (生活史研究家で昭和のくらし博物館館長の小泉和子さんの視点から母のスズさんの一生と専業主婦としての衣食住のさまざまな道具や手仕事を具体的に説明・紹介。また和子さんたちの鳴子温泉への学童疎開や横浜大空襲等も記録映像と共に折り込まれています。その横浜大空襲への関心から観に行ったのですが、忘れかけていた昔の道具・家具のこと等々懐かしく思い出しました。)
▶「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」については→コチラに予告編を含めて詳しく紹介されています。先週「きみが死んだあとで」に関連して私ヌルボ自身の思い出を書きましたが、この「スズさん」についてもごく個人的な記憶がいろいろ甦ってきました。実はヌルボの母も1910年生まれ。明治43年、大逆事件や韓国併合の年です。東京の下町に生まれ育ち、関東大震災の経験も聞きました。運のいいことに全然焼け死んだ人たちも見ることなく世田谷の方に家族で逃げたとか・・・。この映画で今さらながら思ったのはかつての女性の家事労働の大変さ。いや、キツい、ツラいということもあるでしょうが、母から娘へとずっと昔から受け継がれてきた衣食住の知識・技術の奥深さです。映画の中で例えば和裁関係の道具の鏝(こて)や箆(へら)が出てきました。子どもの頃見た道具です。洗い張りも憶えています。縁側から庭に差し渡した洗い張り板を滑り台にして遊んだことがありました。本作の映像では洗い張り板ではなく伸子針(シンシバリ←今ググって名称を知った)を使っていましたが・・・。(洗い張りについては→コチラや→コチラ参照。)
スズさんは当時の主婦としてはふつうなのかも知れませんが、縫い物などお手のもので80代頃(?)足を傷めた時もベッドで上半身を起こしてチャッと袋物なんかを作ったりしてました。そういえばヌルボも高校時代の冬着ていたどてらは母の手製だったか・・・。食生活についても、親族の集まりの時など当然のように小豆をゆでておはぎを作ったりしています。一方男はというと、ヌルボの学生時代(60年代末)スーパーで買い物してる男性はまだ多くはなかったですね。下宿で初めて作った味噌汁が全然おいしくなかったのはダシを入れるものだということを知らなかったからです(笑)。1905年生まれの父が自分で何か作って食べたことがあったかは今も疑問です。ご飯のおかわりでさえも少し手を伸ばせば自分でよそえるのにまだ台所で水仕事をしている母に「おーい、おかわり!」などと声をかけてました。まあ昔の男はおよそそんなものだったのかも。で、ヌルボは帰省した折り母に料理とか洗濯とか生活の知恵をたまに授けてもらって、そんな時昔から伝えられてきたのであろう女性社会の文化のごく一端に触れた思いがしたものです。
女性の、とくに主婦の生活が大きく変わったのはやはり1950年代後半<三種の神器>と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫に代表される家電の普及ですね。それが女性を家事労働にかける時間を大幅に減らし、また男性でもスイッチ1つで洗濯も調理もできる時代になりました。今、専業主婦と言えばややもすれば「家でラクしてるけっこうな身分」とさえ見られかねない、ですか? この数十年の間に女子の進学率も高まり、社会での男女平等の動きが顕著に進められてきているのは、昔のような男女の社会的分業を成立させてきた基盤がほとんど根本から変わってきたということなんでしょうね。
このドキュメンタリーでは1945年5月29日の横浜大空襲についても当時の記録映像と共に語られています。焼夷弾攻撃で約8千~1万人もの死者を出した空襲ですが、「今一般に3月10日の東京大空襲ばかりが多く報道され、他はあまり知られていないのは問題」との大墻敦監督の言葉はまさにその通り。全国各地に空襲犠牲者の慰霊碑や資料館があります。29日(土)はまさに横浜大空襲からちょうど76年目にあたる日。大通り公園にある平和祈念碑前での<横浜大空襲祈念のつどい>は昨年に続いて今年も中止なのかな。※右上画像は小泉和子さんの著書「くらしの昭和史」(朝日選書)。このドキュメンタリーと多くの部分が重なり、また写真や図も豊富で読みやすくためになる本です。
★★★ NAVERの人気順位(5月25日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) 学校に行く道(韓国) 9.61(111)
②(新) 草間彌生∞INFINITY 9.40(10)
③(4) 玆山魚譜(韓国) 9.31(2,420)
④(6) ソウルフル・ワールド 9.30(9,785)
⑤(5) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本) 9.29(12,114)
⑥(3) 子供たちは楽しい(韓国) 9.22(169)
⑦(10) オクトノーツと火のリング 9.18(40)
⑧(-)私のお姉さんチョン・ジヒョンと私(韓国) 9.14(177)
⑨(-) 僕にはとても大切な君(韓国) 9.08(132)
⑩(-) クルードさんちの新時代 9.06(42)
②「草間彌生∞INFINITY」が新登場です。水玉模様が特徴的な作品で知られる世界的なアーティスト、草間彌生にスポットを当てたドキュメンタリーですが、日本ではなくアメリカの作品。第2次大戦期に幼少期を過ごし、芸術に理解のない家庭を出て単身渡米して以降の60年以上、人種差別や性差別、病気に苦しみながらも、多彩な創作活動を続けてきた彼女の人生と芸術をたどります。日本では2019年に公開されています。韓国題は「쿠사마 야요이: 무한의 세계」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(2) ノマドランド 8.00(8)
③(3) スパイの妻(日本) 8.00(5)
④(新) アイダよ、何処へ? 7.67(3)
⑤(4) ミナリ 7.58(12)
⑥(-) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑦(7) ファーザー 7.13(8)
⑧(8) 玆山魚譜(韓国) 7.00(9)
⑨(9) レ・ミゼラブル 7.00(6)
⑩(10) クルードさんちの新時代 7.00(2)
⑩(10) いい光、いい空気(韓国) 7.00(2)
④「アイダよ、何処へ?」が新登場です。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、エストニア、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェー、トルコの合作によるドラマ。デビュー作「サラエボの花」(2006)でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ監督作品で、今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされました。物語の舞台は1995年夏のボスニア・ヘルツェゴヴィナ東部の町スレブレニツァ。セルビア人勢力が村を攻撃すると、ボスニア人たちは安全地域の国連キャンプに避難しました。そんな中、国連平和維持軍の通訳として働くアイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は夫と息子がキャンプ内に入って来られなかったと知り、彼らを救うために東奔西走します・・・。韓国題は「쿠오바디스, 아이다(クォヴァデス、アイダ)」。日本公開は9月17日です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月21日(金)~5月23日(日) ★★★
久々のメガヒット「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」 あっという間に100万人突破!
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・5/19 ・・・628,096 ・・・・・1,132,887 ・・・・・11,090 ・・・・2,296
/ジェットブレイク
2(新)・・STAND BY ME ドラえもん2(日本)・・5/19・・11,054・・・・・65,560・・・・・・・・・577 ・・・・・・387
3(4)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・19,752・・・・・2,044,636 ・・・・・19,697 ・・・・・・392
無限列車編(日本)
4(1)・・スパイラル: ブック・オブ・ソウ・・5/12・・・・9,677 ・・・・・・・122,849・・・・・・・1,220 ・・・・・・417
5(2)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・・7,530 ・・・・・・・303,269・・・・・・・2,801 ・・・・・・287
6(5)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・・4/28 ・・・・・6,200 ・・・・・・・365,371・・・・・・・3,375 ・・・・・・276
7(3)・・クルードさんちの新時代 ・・・・・5/05 ・・・・・6,188 ・・・・・・・222,304・・・・・・・1,962 ・・・・・・255
8(7)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428 ・・・・・10,150 ・・・・・・156
9(69)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・5/19 ・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
10(8)・・劇場版 コンスニ・・・・・・・・・・・・5/05 ・・・・・3,337・・・・・・・・・72,673 ・・・・・・・・637・・・・・・・139
:おもちゃの国 大冒険(韓国)
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
このところ長続きするヒット作が現われず1位が3週間以内で次々と変わっています。そんな中、1度しかトップに立っていない「鬼滅の刃」が1月以来17週ずっと5位以内を維持しているのは注目に値します。
1・2・9位の3作品が新登場です。
1位「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」はアメリカのアクション。
2001年に始まる人気シリーズの第9作です。ドム(ヴィン・ディーゼル)は危険な世界を離れて愛するレティ(ミシェル・ロドリゲス)と共に静かに暮らしていました。ところが、そんな彼の前に彼自身と同等のスキルを持つ弟ジェイコブ(ジョン・シナ)が刺客となって現われます。その裏で糸を引いていたのは宿敵のサイバーテロリスト、サイファー(シャーリーズ・セロン)でした。ドムはファミリーを招集し、この危機に立ち向かいますが・・・。韓国題は「분노의 질주: 더 얼티메이트」。日本公開は8月6日です。いやあ、→この予告編だけでもスゴくて笑っちゃいます。
2位「STAND BY ME ドラえもん2」は、ドラえもんシリーズ初の3DCGアニメだった「STAND BY ME ドラえもん」(2014)に続くフル3DCGのドラえもん映画第2弾。タイムマシンで過去に行ったら今は亡きおばあちゃんが「のび太のお嫁さんを見たい」と言ってたので、のび太とドラえもんは今度は未来へ飛びますが・・・。韓国題は「도라에몽: 스탠바이미 2」です。私ヌルボはこれ観てませんが、一般論として3Dアニメは全然好みじゃないんですよね。漫画が原作の作品はとくに。2Dで十分魅力的なのに、3Dにする意味がどこにあるんでしょうね。3Dにすると現実に近くなって変にリアル味を増すか、それを避けるとブキミになるし・・・って、ここに書くことじゃないか。※韓国のネチズンのコメントを見ると「3Dドラえもんは1作目もそうだったけど띵작(名作)だね」と書いてる人もいました。
9位「一人暮らしの人々」は韓国のドラマ。冒頭にも記したように、近年韓国で一挙に増えてきて社会的なイシューになっている<一人暮らしの人々>をテーマにした作品です。ジナ(コン・スンヨン)は家でも外でも常に1人の方が落ち着きます。周囲の人たちはちょくちょく話しかけてきますが、ジナはそれさえも苦手です。会社で新入社員の1:1の教育まで引き受けることになり、つらくて死にそうなくらい。そんなある日、出退勤の際に毎日話しかけてきた隣の男性が誰にも知られず独りで亡くなったことを知ります。彼の死後、ジナの静かな日常に小さな波紋が広がりますが・・・。原題は「혼자 사는 사람들」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428・・・・・・10,150 ・・・・・・156
2(25)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・・・5/19 ・・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441 ・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
3(3)・・息子の名前で(韓国)・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・1,665・・・・・・・・・22,824・・・・・・・・・198・・・・・・・・96
4(2)・・僕にはとても大切な君(韓国)・・・・5/12・・・・・・・1,129・・・・・・・・・22,813・・・・・・・・・205 ・・・・・・・70
5(10)・・復活: その証拠(韓国)・・・・・・・・10/08 ・・・・・・・・899・・・・・・・・・46,264・・・・・・・・・382・・・・・・・・15
2位「一人暮らしの人々」が新登場ですが、この作品については上述しました。
1つ目は韓国映画の「一人暮らしの人々」。本ブログで10年前「韓国でも「お一人様で外食もOK」の時代に突入か?」と題した記事(→コチラ)を書きました。その頃から<혼자>(ホンジャ.一人)をモトに、<혼밥>(ホンパプ.一人飯)、<혼술>(ホンスル.一人酒)、<혼영>(ホニョン.一人映画)のような新語が次々と生まれ、そんな人たちを<홀로족>(ホルロジョク.一人族)、さらには<혼족>(ホンジョク)と呼ぶようになっています。
また2020年の統計によると、韓国の全世帯の約30%が1人世帯とのこと。ソウルは約34%で、40年前に比べて16倍も増加しているそうで、今や社会問題化しているようです。そんな韓国で一人暮らしの方が気楽という若い女性を主人公にしたドラマです。※日本の1人世帯の比率は1995年が約26%で2020年が30%。ここでも韓国に「追いつかれた」というわけです。
2つ目は「アイダよ、何処へ?」。1974年に現在のボスニアの首都サラエボで生まれたジュバニッチ監督作品で、デビュー作「サラエボの花」(2006)同様自身の90年代の体験に基づく作品で今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされる等高い評価を得ています。その内容の焦点は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の中で1995年7月に起きた戦後最悪のジェノサイド(集団虐殺)とされる<スレブレニツァの虐殺>(→ウィキペディア)です。
日本公開は9月なので私ヌルボももちろん未見ですが、軍事的・政治的視点ではなく、多くの悲劇に見舞われた人々からの視点は貴重で、ぜひ早く観てみたいものです。ただ、大局的に見ると西欧諸国、NATO、アメリカ、国連軍、そして本作の製作に関わった(下掲の)諸国やNATO、アメリカ等の側も全然問題がないわけでもなさそうですが・・・。合作に名を列ねている諸国は、やはり反セルビア、反ロシアなんですね。作品自体に対する評価は別とはいえ、それでも一般論として映画作品の政治的意味はつきまとうことは念頭に置く必要はあるでしょうね。
▶この1週間で観た映画は次の2本です。
・「茜色に焼かれる」★★★★★ (コロナ下でも公務員や年金生活者の生活はあまり変わってないと思われますが、さすがに石井裕也監督、厳しい状況下にある人々にスポットをあてて問題提起をしてます。7年前の高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違い事故(!)で夫を亡くした母(尾野真千子)と中学生の子の2人家族、もっとひどい生い立ちを抱えつつ現実の問題に直面している女性等。「それでも何で生きようとするんだ」という風俗店の店長(永瀬正敏)の口から発せられる言葉は彼らにとっては決して極端なものではないのでしょう。大体は平穏無事に日々を過ごしている私ヌルボにとって、登場人物やストーリーが少し極端な感もありますが、そう感じるのも立場の違いかどうか不明。尾野真千子さんの神懸かり的(?)熱演に☆1つ分をオマケしました。)
・「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」★★★★★ (生活史研究家で昭和のくらし博物館館長の小泉和子さんの視点から母のスズさんの一生と専業主婦としての衣食住のさまざまな道具や手仕事を具体的に説明・紹介。また和子さんたちの鳴子温泉への学童疎開や横浜大空襲等も記録映像と共に折り込まれています。その横浜大空襲への関心から観に行ったのですが、忘れかけていた昔の道具・家具のこと等々懐かしく思い出しました。)
▶「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」については→コチラに予告編を含めて詳しく紹介されています。先週「きみが死んだあとで」に関連して私ヌルボ自身の思い出を書きましたが、この「スズさん」についてもごく個人的な記憶がいろいろ甦ってきました。実はヌルボの母も1910年生まれ。明治43年、大逆事件や韓国併合の年です。東京の下町に生まれ育ち、関東大震災の経験も聞きました。運のいいことに全然焼け死んだ人たちも見ることなく世田谷の方に家族で逃げたとか・・・。この映画で今さらながら思ったのはかつての女性の家事労働の大変さ。いや、キツい、ツラいということもあるでしょうが、母から娘へとずっと昔から受け継がれてきた衣食住の知識・技術の奥深さです。映画の中で例えば和裁関係の道具の鏝(こて)や箆(へら)が出てきました。子どもの頃見た道具です。洗い張りも憶えています。縁側から庭に差し渡した洗い張り板を滑り台にして遊んだことがありました。本作の映像では洗い張り板ではなく伸子針(シンシバリ←今ググって名称を知った)を使っていましたが・・・。(洗い張りについては→コチラや→コチラ参照。)
スズさんは当時の主婦としてはふつうなのかも知れませんが、縫い物などお手のもので80代頃(?)足を傷めた時もベッドで上半身を起こしてチャッと袋物なんかを作ったりしてました。そういえばヌルボも高校時代の冬着ていたどてらは母の手製だったか・・・。食生活についても、親族の集まりの時など当然のように小豆をゆでておはぎを作ったりしています。一方男はというと、ヌルボの学生時代(60年代末)スーパーで買い物してる男性はまだ多くはなかったですね。下宿で初めて作った味噌汁が全然おいしくなかったのはダシを入れるものだということを知らなかったからです(笑)。1905年生まれの父が自分で何か作って食べたことがあったかは今も疑問です。ご飯のおかわりでさえも少し手を伸ばせば自分でよそえるのにまだ台所で水仕事をしている母に「おーい、おかわり!」などと声をかけてました。まあ昔の男はおよそそんなものだったのかも。で、ヌルボは帰省した折り母に料理とか洗濯とか生活の知恵をたまに授けてもらって、そんな時昔から伝えられてきたのであろう女性社会の文化のごく一端に触れた思いがしたものです。
女性の、とくに主婦の生活が大きく変わったのはやはり1950年代後半<三種の神器>と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫に代表される家電の普及ですね。それが女性を家事労働にかける時間を大幅に減らし、また男性でもスイッチ1つで洗濯も調理もできる時代になりました。今、専業主婦と言えばややもすれば「家でラクしてるけっこうな身分」とさえ見られかねない、ですか? この数十年の間に女子の進学率も高まり、社会での男女平等の動きが顕著に進められてきているのは、昔のような男女の社会的分業を成立させてきた基盤がほとんど根本から変わってきたということなんでしょうね。
このドキュメンタリーでは1945年5月29日の横浜大空襲についても当時の記録映像と共に語られています。焼夷弾攻撃で約8千~1万人もの死者を出した空襲ですが、「今一般に3月10日の東京大空襲ばかりが多く報道され、他はあまり知られていないのは問題」との大墻敦監督の言葉はまさにその通り。全国各地に空襲犠牲者の慰霊碑や資料館があります。29日(土)はまさに横浜大空襲からちょうど76年目にあたる日。大通り公園にある平和祈念碑前での<横浜大空襲祈念のつどい>は昨年に続いて今年も中止なのかな。※右上画像は小泉和子さんの著書「くらしの昭和史」(朝日選書)。このドキュメンタリーと多くの部分が重なり、また写真や図も豊富で読みやすくためになる本です。
★★★ NAVERの人気順位(5月25日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) 学校に行く道(韓国) 9.61(111)
②(新) 草間彌生∞INFINITY 9.40(10)
③(4) 玆山魚譜(韓国) 9.31(2,420)
④(6) ソウルフル・ワールド 9.30(9,785)
⑤(5) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本) 9.29(12,114)
⑥(3) 子供たちは楽しい(韓国) 9.22(169)
⑦(10) オクトノーツと火のリング 9.18(40)
⑧(-)私のお姉さんチョン・ジヒョンと私(韓国) 9.14(177)
⑨(-) 僕にはとても大切な君(韓国) 9.08(132)
⑩(-) クルードさんちの新時代 9.06(42)
②「草間彌生∞INFINITY」が新登場です。水玉模様が特徴的な作品で知られる世界的なアーティスト、草間彌生にスポットを当てたドキュメンタリーですが、日本ではなくアメリカの作品。第2次大戦期に幼少期を過ごし、芸術に理解のない家庭を出て単身渡米して以降の60年以上、人種差別や性差別、病気に苦しみながらも、多彩な創作活動を続けてきた彼女の人生と芸術をたどります。日本では2019年に公開されています。韓国題は「쿠사마 야요이: 무한의 세계」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(2) ノマドランド 8.00(8)
③(3) スパイの妻(日本) 8.00(5)
④(新) アイダよ、何処へ? 7.67(3)
⑤(4) ミナリ 7.58(12)
⑥(-) 逃げた女(韓国) 7.33(6)
⑦(7) ファーザー 7.13(8)
⑧(8) 玆山魚譜(韓国) 7.00(9)
⑨(9) レ・ミゼラブル 7.00(6)
⑩(10) クルードさんちの新時代 7.00(2)
⑩(10) いい光、いい空気(韓国) 7.00(2)
④「アイダよ、何処へ?」が新登場です。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、エストニア、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェー、トルコの合作によるドラマ。デビュー作「サラエボの花」(2006)でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ監督作品で、今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされました。物語の舞台は1995年夏のボスニア・ヘルツェゴヴィナ東部の町スレブレニツァ。セルビア人勢力が村を攻撃すると、ボスニア人たちは安全地域の国連キャンプに避難しました。そんな中、国連平和維持軍の通訳として働くアイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は夫と息子がキャンプ内に入って来られなかったと知り、彼らを救うために東奔西走します・・・。韓国題は「쿠오바디스, 아이다(クォヴァデス、アイダ)」。日本公開は9月17日です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月21日(金)~5月23日(日) ★★★
久々のメガヒット「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」 あっという間に100万人突破!
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・5/19 ・・・628,096 ・・・・・1,132,887 ・・・・・11,090 ・・・・2,296
/ジェットブレイク
2(新)・・STAND BY ME ドラえもん2(日本)・・5/19・・11,054・・・・・65,560・・・・・・・・・577 ・・・・・・387
3(4)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・19,752・・・・・2,044,636 ・・・・・19,697 ・・・・・・392
無限列車編(日本)
4(1)・・スパイラル: ブック・オブ・ソウ・・5/12・・・・9,677 ・・・・・・・122,849・・・・・・・1,220 ・・・・・・417
5(2)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・・7,530 ・・・・・・・303,269・・・・・・・2,801 ・・・・・・287
6(5)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・・4/28 ・・・・・6,200 ・・・・・・・365,371・・・・・・・3,375 ・・・・・・276
7(3)・・クルードさんちの新時代 ・・・・・5/05 ・・・・・6,188 ・・・・・・・222,304・・・・・・・1,962 ・・・・・・255
8(7)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428 ・・・・・10,150 ・・・・・・156
9(69)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・5/19 ・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
10(8)・・劇場版 コンスニ・・・・・・・・・・・・5/05 ・・・・・3,337・・・・・・・・・72,673 ・・・・・・・・637・・・・・・・139
:おもちゃの国 大冒険(韓国)
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
このところ長続きするヒット作が現われず1位が3週間以内で次々と変わっています。そんな中、1度しかトップに立っていない「鬼滅の刃」が1月以来17週ずっと5位以内を維持しているのは注目に値します。
1・2・9位の3作品が新登場です。
1位「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」はアメリカのアクション。
2001年に始まる人気シリーズの第9作です。ドム(ヴィン・ディーゼル)は危険な世界を離れて愛するレティ(ミシェル・ロドリゲス)と共に静かに暮らしていました。ところが、そんな彼の前に彼自身と同等のスキルを持つ弟ジェイコブ(ジョン・シナ)が刺客となって現われます。その裏で糸を引いていたのは宿敵のサイバーテロリスト、サイファー(シャーリーズ・セロン)でした。ドムはファミリーを招集し、この危機に立ち向かいますが・・・。韓国題は「분노의 질주: 더 얼티메이트」。日本公開は8月6日です。いやあ、→この予告編だけでもスゴくて笑っちゃいます。
2位「STAND BY ME ドラえもん2」は、ドラえもんシリーズ初の3DCGアニメだった「STAND BY ME ドラえもん」(2014)に続くフル3DCGのドラえもん映画第2弾。タイムマシンで過去に行ったら今は亡きおばあちゃんが「のび太のお嫁さんを見たい」と言ってたので、のび太とドラえもんは今度は未来へ飛びますが・・・。韓国題は「도라에몽: 스탠바이미 2」です。私ヌルボはこれ観てませんが、一般論として3Dアニメは全然好みじゃないんですよね。漫画が原作の作品はとくに。2Dで十分魅力的なのに、3Dにする意味がどこにあるんでしょうね。3Dにすると現実に近くなって変にリアル味を増すか、それを避けるとブキミになるし・・・って、ここに書くことじゃないか。※韓国のネチズンのコメントを見ると「3Dドラえもんは1作目もそうだったけど띵작(名作)だね」と書いてる人もいました。
9位「一人暮らしの人々」は韓国のドラマ。冒頭にも記したように、近年韓国で一挙に増えてきて社会的なイシューになっている<一人暮らしの人々>をテーマにした作品です。ジナ(コン・スンヨン)は家でも外でも常に1人の方が落ち着きます。周囲の人たちはちょくちょく話しかけてきますが、ジナはそれさえも苦手です。会社で新入社員の1:1の教育まで引き受けることになり、つらくて死にそうなくらい。そんなある日、出退勤の際に毎日話しかけてきた隣の男性が誰にも知られず独りで亡くなったことを知ります。彼の死後、ジナの静かな日常に小さな波紋が広がりますが・・・。原題は「혼자 사는 사람들」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428・・・・・・10,150 ・・・・・・156
2(25)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・・・5/19 ・・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441 ・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
3(3)・・息子の名前で(韓国)・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・1,665・・・・・・・・・22,824・・・・・・・・・198・・・・・・・・96
4(2)・・僕にはとても大切な君(韓国)・・・・5/12・・・・・・・1,129・・・・・・・・・22,813・・・・・・・・・205 ・・・・・・・70
5(10)・・復活: その証拠(韓国)・・・・・・・・10/08 ・・・・・・・・899・・・・・・・・・46,264・・・・・・・・・382・・・・・・・・15
2位「一人暮らしの人々」が新登場ですが、この作品については上述しました。
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