ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国の2015年度大学修学能力試験(修能):第二外国語「日本語」は今年も良問だがちょっと疑問も・・・

2014-11-21 19:24:28 | 韓国語あれこれ
※この記事は2014年11月実施の修能についての記事です。2015年11月の修能「日本語」については→コチラの記事をご覧ください。

 14日の記事で書いたように、11月13日韓国では大学修学能力試験(修能)が実施されました。
 その第二外国語の中に「日本語」があります。
 本ブログでは、2009年11月以降毎年この「日本語」の問題を解き、分析した記事を載せてきました。(あ、初回はうっかり2008年実施の問題を載せてしまいましたが。)
 今年の問題もさっそく見てみました。→コチラのリスト中の<일본어Ⅰ_문제>(日本語Ⅰ 問題)をクリックしてPDFファイルをダウンロードして下さい。正答はその下をクリックすればOK。

 さて、そこでわかったことのひとつは、私ヌルボのようなふつうの日本人でも必ずしも満点が取れないということ。2年に1度は首をひねってしまう問題があります。
 たとえば2011年度の問題。(→コチラ。)
 時間の(a)何分 (b)3分 (c)6分 (d)14分 の「分」の読み方、どれが「ふん」でどれが「ぷん」だか、いまだによくわかりません。(正答を見ると、「ぷん」と読むのが(c)と、(d)なんですと!)

 また2013年度の問題(→コチラ)では、「①去年 ②人形 ③住所 ④ニュース ⑤コップ の中で長さ(拍子)が他の4つと異なるものは?」という問題。
 「あれ、どれも2音節じゃないの?」と考える日本人は多いのでは? もちろん字数でもないし・・・。(②だけが4拍子で、他はすべて3拍子。)

 そして今回の2015年度ではこれ。

 「文法表現が正しいものだけを選べ」という問題です。
 まず、aはまず問題なし、ですね。bは、「あとに」より「あとで」の方が自然じゃないか?とか、もしかしたら「飲まれました」に何かちょっと引っかかるものが・・・という人もいるかもしれませんが、まあいいでしょう。
 問題はcで、「日本に来てすぐなので」とか「日本に来たばかりなので」ならわかりますが、「日本に来たところなので」は不自然。しかし言わんとしているところはわかります。これを正しくないとすべきか否か? 私ヌルボは自信のないまま誤りと判断し、またそれが正答となっていました。サークル仲間に訊くと、ほぼ同様の意見でした。

 上記のような問題はあったものの、全体としては昨年と同様良問だったと思います。
 ※昨年については→コチラ参照。

 さて、この修能「日本語」の近年の出題傾向・特色としては、次のようなことがあげられます。

[A]会話が多い。
 ・・・全30問中11問と、3分の1以上が会話文の問題になっています。挨拶や、友人等との会話、買い物や医者との会話等、内容もさまざまです。

[B]韓国人が間違いやすい発音は必出。
 ・・・母音の長短、清音と濁音の区別等で、毎年必ず出題されています。
下は今回の問題。

 日本人にとっては簡単ですけどね。あ、清音と濁音の区別はむずかしいか?

 なお、発音以外でも韓国人だから間違えやすいかなという問題が今回2つありました。

 正答はもちろん②ですが、韓国語では「薬を飲む(약을 마시다)」でも「薬を食べる(약을 먹다)」でもOKなので、③を選んでしまった人が多かったかもしれません。

 韓国語の「보다」には「見る」と「会う」の両方の意味があるので、韓国人にとっては引っかかりやすいかも・・・。正答の①ではなく③を選んで人はけっこういたと思います。

[C]日本人の生活様式や、日本の伝統文化を説明・紹介するような問題文が多い。
 ・・・毎年必ず出題されています。これまでも「寿司」「温泉」「こたつ」「タクシーの乗り方」等が取り上げられました。今回は「花見」と、そして次の「駅弁」の問題です。

 駅弁の歴史が130年というのは知らなかったな。

[D]日本の街などで見かける掲示物、広報等に関する問題が出る。
 ・・・上記[C]のような日本の生活・社会にも関係するもの。昨年は地下鉄の「ひらくドアにご注意!」という貼り紙についての出題でした。今回は、「のんだら のらない」というポスターと、次のような銭湯の注意書きについての2つが出題されています。

 こういう実用的な問題は良いと思います。銭湯のマナーについては、小樽の「外国人お断り」裁判等いろいろ問題になったりしましたねー・・・。

[E]日本語会話というよりも、日本人の会話の特色についての問題文がある。
 ・・・「日本人はよくあいづちをうつ」という問題文が2012年度にありました。(→コチラ。) 今回は「あいまいなことば」についてです。

 ①は「‘お茶、おかわり どう?’はあいまいな表現である。」
 ②は「‘あ、いいね’は拒絶する時に使用することができる」。
 ③は「‘いい’に‘もう’をつけると承諾の意味にもなる。」
 ④は「‘飲みたいね’はひかえめに辞退する時にも使う。」
 ⑤は「‘いい’は場合により相反する意味としても用いられる。」
 ・・・もちろん⑤が正解。

 さて、これら[A]~[E]の他に、日本のセンター試験や多くの語学検定試験と比較して特筆すべき特色は、昨年にも書きましたが「小説やエッセイ等の読解問題は皆無!」ということです。
 つまりは実用性を重視しているということ。日常会話だけでなく、日本でよく見かける掲示物や、社会的なマナー等、日本への旅行や、仕事・留学等による日本での生活に役立つような内容になっています。
 ※上にあげたお医者さんとの会話は3年前も出題されていたなー。(→コチラ。)
 ヌルボが先に「良問」と書いた理由はその点にあります。
 一方、日本のセンター試験「外国語」中の「韓国語」はむずかしいばかりで楽しくありません。
修能試験の「日本語」の受験生は8千人近くいる(今回)のに対して、センター試験の「韓国語」の方は200人足らずの「精鋭」しか受験しないという違いも難易度の差の原因の1つでしょう。
 しかし、中学・高校の英語の授業&定期テストなんかはもっとこんな実用的な内容を増やした方がいいと思います。それでも昔に比べるとかなり変わってきてはいるのかな?

 ちなみに、このレベルの修能の「日本語」で受験生が何点くらい取っているかというと・・・。
 下の表は昨年(2014年度)の「日本語」の得点別等級区分です。
    (50点満点)
 これをみると、大体半分くらいできて平均程度といったところですね。
 しかし、最上級の1等級に入るには、3つ以上の間違いは許されません。(配点が1点の問題と2点の問題がありますが。) そんなにむずかしくないといっても、トップクラスに入るのはさすがにたいへんだと思います。

 今回の修能試験についてこれが3つ目の記事です。
 他の科目はどうかなと思い、さっき無謀にも「韓国語」の問題をちょつと見てみましたが、やっぱり無謀でした。
 2012年度「国史」では、独島関係の問題が出たことが日本でも報じられました。それ以外でも、歴史関係では日本とは「歴史認識のズレ」があるようです。・・・ということで、ちょっと見てみようと思います。あ、2014年度(昨年)「国史」から「韓国史」に科目名が変わったのですね。知らんかったわ。