うーむ、政治的なネタは資料を読み解くのも難しいし、それについてどう書くかも難しい・・・ということで、3日も間が空いてしまいました。
はい。今回もチャンポンの話、といってもなぜか政治・社会ネタなんですよ。
とりあえずは、次の写真を見てみてください。
【「間違い探し」のような2枚の画像ですが・・・。右がオリジナルのナガサキ・チャンポン。】
前の記事にも載せた韓国のナガサキ・チャンポンの袋が2つ、と思ったら、違っているところがいくつも・・・。
商品名からして「나가사끼짬뽕(ナガサキ・チャンポン)」ではなく「가카새끼짬뽕(カカセキ・チャンポン)」で、右上のメーカー名は「BBK명박(明博)」。
つまり、この画像は李明博大統領を風刺したパロディ画像なんですね。「가카새끼(カカセキ)」の「カカ」は「(大統領)閣下」、「セキ(새끼)」は韓国語の悪口で多用される「野郎」というような意味の言葉です。チャンポンの写真の上の字「풍부한 꼼수와 비리로 우려낸 역겨운 매국의 맛」は「豊富なセコさと不正で絞り出したむかつく売国の味」。
また「BBK」というのは2007年の大統領選挙当時、李明博候補が関与したとの疑惑があった株価操作事件です。※詳細は→コチラ。
さらに左上隅の絵、店ののれんには「재테크(財テク)」、その下には「도덕적으로 완벽한 맛(道徳的に完璧な味)」と記されています。
隅々まで、まあ手の込んだものです。ところが、同様のパロディ画像がココミョンの方にもあるのです。
【こちらも右が本来のココミョンです。左、ずいぶんテマヒマかけて作ってますねー。】
コチラのデタラメ品名は「꼼수면(コムスミョン)」。「꼼수(コムス)」は「セコい」という意味と、李明博政府批判の立場の人気インターネット放送「나는 꼼수다(ナヌン コムスダ.私はセコい)」(略称ナ・コムス)に基づいています。品名の上の「시커먼 땟국물」は「真っ黒な垢」。李大統領の顔と一緒に「가카가 쳐말아먹은 비릿한 바로 그맛!(閣下が混ぜて食べる生臭いまさにその味!)」。さらに袋の左上には「새로운 역겨움 MB(新しいムカツキ明博)」。
いやあ、なんとも凝っているものです、ハハハのハ。
さて、問題はこの画像を12月18日SNSにupした人物。昌原(チャンウォン)地裁の李政烈(イ・ジョンニョル)部長判事という話題の人です。
彼について説明する前に、「ナヌン コムスダ」について、かなり長い脇道に入ります。
この反李政権のラジオ放送で人気の「四人衆」が、昨年のベストセラー本のキム・オジュン「黙って政治(닥치고정치)やキム・ヨンミン「「私はコムスだ」裏話」の著者2人と、週刊誌「時事IN」のチュ・ジンウ記者、鄭鳳株(チョン・ポンジュ)民主党前議員です。
そして上記2007年のBBK事件にあたり李明博陣営を厳しく追及したのがその鄭鳳株前議員だったのです。しかし彼は虚偽事実の流布と名誉毀損の罪で大法院(最高裁)で有罪判決を受け懲役1年が確定し、昨年暮れ12月26日拘束収監されてしまいました。
彼は、昨年末韓国環境財団選定の第7回「世の中を明るくした人たち」33人の中に選ばれたとのニュースも流されました。寄付、献身、挑戦、情熱、感動、笑いで韓国社会を明るくしてくれた個人や団体を表彰するというものとのことです。(→関連記事)
つまり、そんな左翼陣営に人気のある前議員を有罪とし、収監してしまったことで、当然それを非難する声は高まります。
たとえば、鄭鳳株前議員に対して有罪判決を下した大法院のイ・サンフン判事に対して、ネチズンたちのツイッター等による「集団攻撃」があったようで、12月24日付「朝鮮日報」では「懲役刑言い渡したイ・サンフン裁判官に腹いせ」という見出しでそれを報じています。いかにも保守紙の代表らしい記事内容です。
また、鄭鳳株前議員の釈放を求める運動が展開されはじめた中で、1月21日、「胸が張り裂けるほど鄭鳳株の釈放を願う」と胸に書いたビキニ姿の女性の写真が「『出てこい! 鄭鳳株』国民運動本部」のHPに掲載したことから、運動本部は同様の写真の投稿を呼びかけました。
これがビキニ・デモですが、これに対しては、これまで「ナ・コムス」を支持してきた作家孔枝泳さんは批判しています。また過去セクハラ問題を追及してきた左翼傾向の女性団体の多くは沈黙しています。一方、「朝鮮日報」はすかさずこの亀裂を突いた(?)記事を載せています。
※「나는 꼼수다」の番組名は大人気の歌番組「나는 가수다(ナヌン カスダ.私は歌手だ)」(略称ナ・カス)から。なお、昨年12月23日からMBCでは「웃고 또 웃고(笑ってまた笑って)」という番組中で「나는 하수다(ナヌン ハスダ.私は下手だ)」という「ナ・コムス」のパロディが好調なスタートを切っています。この「ナヌン ハスダ」、「オーマイニュース」の記事では「意外に高クォリティ」と評価してます。(朴槿惠や安哲秀も登場したりして・・・。(もちろんニセ者。)→YouTube)
「ナ・コムス」と鄭鳳株前議員について長々と記しました。
ここで本筋の「カカセキ・チャンポン」と「コムスミョン」の産みの親、李政烈(イ・ジョンニョル)部長判事の話に戻ります。
12月22日の「オーマイニュース」のインタビュー記事等によると、2004年に良心的兵役拒否に対して無罪判決を下して注目されました。そして最近ではSNSやラジオ出演を通じて韓米FTA強行処理に対する反対を表明する等、李明博政権批判を積極的に展開している<概念判事3人衆(개념판사 3인방)>の1人です。
彼らに対して、「朝鮮日報」と並ぶ保守紙の「東亜日報」は12月9日付(日本版)「裁判所に「政治判事」が溢れているようでは」と題した社説で「政治的中立条項に違反している」と批判しています。
※この社説で、かつて日本で注目された青法協(青年法律家協会)を引き合いに出して、彼ら進歩的な裁判官たちが所属するウリ法研究会への対処を大法院長に求めている点に注目。
・・・つまり、李明博政権に対する、左右の政治的対立の中で、とくに左翼色の強いネット社会で法曹界にある判事までが明確な政府批判の意見表明するに至り論議をよんでいる・・・そんな中で、家中の人物が風刺の笑いを込めた作品としてこれら2つの人気の白スープ麺のパロディが登場したということですね。
「ナヌン コムスダ」が笑いの要素が武器になっているように、この2つのパロディ画像も笑えるという点で相当に注目されたようです。
左派陣営の代表メディアの1つオーマイニュースの12月23日の記事「ココミョンとナガサキ・チャンポン、ほんとにすみません」はとても楽しそうに書かれています。「今や麺(ミョン)の全盛時代です」と添書きして、ネチズンの「鄭鳳株は赦免(サミョン)! 民主党は睡眠(スミョン)(..)ZZZ 、ハンナラ党は仮眠(×.×)、国民は不眠(プルミョン)(T.T)」等々のおもしろいカキコミを紹介したりして・・・。
・・・ところが、コトはまだ現在進行中。
今回の記事は[②のA]止まりで、さらに[②のB]へとつづくのです。ふー。