ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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「朝鮮学校 無償化問題」 反対派・賛成派にあえて問う(上)

2010-09-13 13:15:05 | 韓国・朝鮮と日本の間のいろいろ
 私ヌルボ、これまで日韓間・日朝間の政治的な問題や、歴史をめぐる問題については一方の立場からの断固たる主張はしてきませんでした。(北朝鮮の人権問題についてはそれなりに書いてはきましたが・・・。)
 主な理由は、たとえばネット上の嫌韓派と反日派の議論(?)を見ても、論議の前提となるべき一定程度の共通基盤さえないところで罵倒しあうばかりで、双方の弱点ばかりが見えてきて、考えれば考えるほどわからなくなってくるというのが正直なところです。

 かねてから問題になっている朝鮮学校の無償化をめぐる問題についても同様で、簡単に結論は出すのはむずかしいですが、今回は少しムリをして、いろいろ考えたところを述べてみます。主張というよりも、問題提起といった感じですが・・・。

 まず話をわかりやすくするために、これが大切、というヌルボなりの所論の基軸というようなものを、前提として2点提示しておきます。
①学校は、生徒に間違ったことを教えてはいけない。
 ②公的機関といっても、学校は政治(とくにその時の政権)のための道具になってはいけない。そのためにも、教育の自立性・自主性は尊重されなければならない。
 ここからすでに意見が合わない人も当然たくさんいらっしゃるでしょうが・・・。
 (①、②とも境界をきっちり線引きすることはむずかしい、というか、ほとんど不可能ですね。後でもう少し具体的に考えてみます。)

 無償化反対派、賛成派の双方に問いたいことがいくつかあります。まず反対派の人に・・・。

①もしかしたら、在日韓国・朝鮮人の人たちのほとんどは「朝鮮学校の無償化賛成」の立場だと思っている人がけっこういるのでは?(とくに賛成派の人) 
 しかし、民団関係の雑誌・新聞を見ると、論説ではないものの、強い「無償化反対」の寄稿・投稿を掲載していることから、明確に「反対」の立場であることが読みとれます。
 たとえば、「KOREA TODAY」8月号に元朝鮮高級学校教師の申相一という人の寄稿が載っていました。彼は「1960年代に日本の大学を出て朝鮮学校教師になった」とのことです。
 以下、彼の寄稿から抜粋しました。

 「朝鮮総連の運営する学校は、決して民族教育と言えるものではない。それは、金日成・金正日父子に忠実な「革命家」を養成する学校である。」 
 「この新学期には、韓国学園への転校生が急増したという。東京韓国学園には、朝鮮学校からの転入生は例年一人か二人程度であったが、今年は十一名の転入生があったという。」
  「朝鮮学校では、韓国籍生徒の人数は秘密にしていた。総連は必死に朝鮮籍死守の運動を展開してきた。だが、韓国籍の生徒は増えるいっぽうだった。だから隠し続けてきた。驚いたことに、東京朝高では49%、大阪朝高では62%が韓国籍であると公表した。実際はもっと多いはずである。・・・・ずばり、いま、「朝鮮籍」は、特別永住者41万人中、約1割(4万人)しかいない。」
  「大阪府知事の発言どおり、金正日(ナチ)と北朝鮮国民(ドイツ国民)は違う。自国民を拉致され主権を脅かされた日本政府が、自らの主権を行使することがどうして「民族差別」であろうか! 民族差別ではない。」

 ・・・申相一氏の結論は「ほんとうの民族教育を同胞の手に取り戻すべきだ」というものです。(←「ほんとうの民族教育」について、ヌルボの見解は保留。)

※申相一氏は<北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会>の理論誌「光射せ!」5号にも「告発リポートを寄せて朝鮮学校の無償化除外を主張していますが、<東アジア黙示録>という反中朝韓サイト中の記事によると、彼は朝鮮総連から「北朝鮮で暮らす身内の命を盾に脅迫」を受けた、とのことです。(「こんな右翼のサイトが信用できるか!?」とお怒りの「賛成派」の皆さん、今しばし抑えて・・・。)

 さらに、8月25日の「民団新聞」には、「「偽装韓国籍」奇異な存在浮上」と題した、(民団及び韓国としては)かなりゆゆしき内容の投稿が載っています。
 韓国籍を取得しながらも、それを利用して韓国に行き、北朝鮮の工作員として活動している「偽装韓国籍」の者がいる、という趣旨です。(申相一氏の文中に、朝鮮高校や大学で優秀な者を工作員に抜擢し育てる、という記述もありました。)
(このあたりについて、ヌルボの判断は一応保留。)

 そこでとくに民団の側に質問したいのは「日本の国益に反する」という理由でも「無償化反対」ですか?」ということ。

 もし「そうだ」とすると、民団系の学校や他の外国人学校も、もしかしたら将来日本側から教育内容にチェックが入って、授業料無償化とか、今までも県・市等から出ている補助金が差し止められる可能性もゼロではないと思うのですが・・・。

②次に、「日本の国益に反する」という理由で「無償化反対」を主張している人への質問です。
 「あなた自身が日本の国益の体現者ですか?」
 <国益>の名の下に、日本人の中でも少数者(主に弱者)が切り捨てられてきた例はいくつもありましたが、今後あなたが<国益>によって排除される可能性を考えたことはありませんか? (ないとしたら、あなたは常に多数派で、安心してその時々の「正論」を主張できる人?)
 とくに教育の問題について考えてみると、日本の戦後教育は戦前の<忠君愛国>を旨とした国家主義的教育が大きな悲劇を生んだことの反省に立脚してスタートしたわけではないですか。現在進行形の政治問題と直結した形で学校教育の在りように口をさしはさむことは避けるのが筋と思います。
 また、教育内容のチェックを支援金・補助金を出すとの当否と結びつけるというのは、すごいイヤ~な感じがします。学校側が「教育内容を指示にしたがって改めますから、財政補助をお願いします」というようになったら、それはそれで教育に携わる主体としての節操が問われるし・・・。

③政治的文脈でこの問題について語るのはどうも・・・、と言いつつ、政治的文脈で語ってしまいますが「朝日新聞」等の伝えるところによると、「国連の人種差別撤廃委員会は・・・・朝鮮学校を高校無償化の対象から除外する動きについて「懸念」を表明した」とのことです。
 (「朝日新聞」という字を見ただけで血圧が上がる人、抑えて抑えて・・・。)
 また、韓国のサイトを見ると、「朝鮮学校だけが除外」されることに対して、それを「民族差別」と受けとめる見方が多いようです。また、一番の当事者である朝鮮学校の生徒も、自分たちに対する差別ととるでしょう。もしかしたら「反日」意識を高めるかもしれません。
 総じて、政治的にはプラスよりもマイナスの方が大きいのではないでしょうか?
(「プラス、マイナスの問題じゃない!」とという答えが返ってきそう・・・。)

④上記②とも関連することですが、政治優先・行政主導がヘタに進行していくと、外国人学校だけでなく、日本の私学や、公立学校まで統制が進んで、学校教育は国の正当化、教科書は国の広報のようなものになってしまいます。国を一定程度相対化する視点がないと未来は開けてこないと思います。
 「無償化反対!」を唱えるにしても、未来につながる、国や民族のワクも超えた、より普遍的な教育理念に基づいた視点からの意見を望みたいものです。

 もう3000字近くも書いてしまいました。「無償化賛成!」の皆さんにも真剣に問いかけたい点がいくつかあります。それは次の記事に続く、ということにします。

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