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「目黒太鼓橋夕日の岡」と「金沢八景内川暮雪」

2013-12-25 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年12月25日(水)11時08分8秒

BBCに美術評論家のJason Farago氏による「冬景色を描いた10枚の崇高な絵」という記事が出ていました。
この6番目が安藤広重の The Drum Bridge and Yuhi Hill at Meguro by Hiroshige (1857) で、次のような解説が付されています。

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How great artists depict winter in 10 sublime paintings

The Drum Bridge and Yuhi Hill at Meguro by Hiroshige (1857)

One of the images from One Hundred Views of Edo, his wildly popular series of ukiyo-e prints, this image depicts a rare stone bridge in the city we now call Tokyo. Captured at an oblique angle, the bridge seems dwarfed under the snow-filled sky, and the passersby, shrouded under bamboo hats, get lost in the landscape. Hiroshige’s winter scenes are perhaps his most sensitive; under snow, even the big city feels impermanent.

広く人気のあるウキヨエのシリーズ、「エドの100の景色」のひとつとして、この絵は今日我々がトウキョウと呼ぶところの都市における珍しい石の橋を描いている。斜めの角度から捉えられた橋は、雪に満たされた空の下で小さく見える。そして竹の帽子をかぶった通行人たちは、風景の中で途方にくれている。ヒロシゲが描いた冬景色(複数形)は、たぶん彼の最も繊細な作品であろう。雪の下で、巨大都市さえもが永続的ではないように感じられる。

http://www.bbc.com/culture/story/20131224-the-10-greatest-winter-paintings

わざと直訳風に訳してみましたが、該当の絵を見ると、そもそも橋がありません。
そして「金沢八景内川暮雪」と明瞭に記してあって、目黒とはずいぶん離れていますね。
何じゃこれ、と思って検索してみたら、タイトルを見る限り、Jason Farago氏は「名所江戸百景」の「目黒太鼓橋夕日の岡」について書いたはずなのに、どんな手違いがあったのか、「金沢八景内川暮雪」が掲載されてしまったようです。

「目黒太鼓橋夕日の岡」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312347
http://hiroshige100.blog91.fc2.com/blog-entry-76.html

ただ、「目黒太鼓橋夕日の岡」の石橋は決してdwarfed(小さく見えて-dwarfは童話などに出てくる「こびと」)となってはいませんし、橋の上の通行人は普通に歩いていて、get lost 状態には見えません。
get lost 状態になっているのは、明らかに「金沢八景内川暮雪」の方ですね。
とすると、どうもJason Farago氏自身が二つの絵を混同しているようで、同氏以外の誰かが単純に絵を取り違えた、といったミスではないようですね。

いずれにせよ誤植収集を趣味のひとつとしている私にとって、BBCからもらった夢のようなクリスマスプレゼントなので、感謝とともに記録しておきます。

ちなみに「金沢八景内川暮雪」は関東学院大学のキャンパス付近を描いているそうですね。
大規模な干拓によって過去の風景を思い浮かべるのが困難なほど変化していますが。

http://dorogame008.web.fc2.com/kkanazawasanpo3.html
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