学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

ブスケ神父

2019-08-21 | 石川健治「精神的観念的基礎のない国家・公共は可能か?」
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2019年 8月21日(水)11時34分13秒

>好事家さん
プロテスタントの弾圧事例はある程度調べたことがあるのですが、ご紹介のブスケ神父のことは名前を聞いたことがある程度でした。
検索してみたところ、ネットではリンク先のブログが一番詳しいようですね。
ただ、この記事を読んでも、ブスケ神父の容疑が今一つはっきりしません。
ゾルゲ事件以降、特高・憲兵隊ともスパイ関係に異常に神経質になっているので、やはりその関係かなとも思うのですが。
また、好事家さんは「国家神道に毒された憲兵」と書かれていますが、「国家神道」と具体的にどのような関係があったかはご存じですか。

「ブスケ神父の虐殺 小林多喜二以外にもあった拷問死」

※好事家さんの下記投稿へのレスです。

カトリック夙川教会 2019/08/20(火) 23:43:52
カトリック夙川教会の創設者はフランス人ジルベン ブスケ神父(1877.11.19-1943.3.10)。
彼は阪神間に1921年はじめてカトリック教会を創設しました。
ところが国家神道に毒された憲兵が求道者を装いブスケ神父に近づく。
求道者を装った憲兵はブスケ神父に神と天皇はどちらが偉いか質問。
求道者を装った青年を完全に信頼した神父は神と答えた。
その後、神父は即刻逮捕連行され拷問の上獄死。
不当逮捕→獄死は共産党員だけではありません。

1603年~1868年、江戸幕府はキリスト教の破教のみを要求していましたが。
明治政府は1873年まで執拗にキリスト教から神道にするよう要求。
こんな事していたら条約改正絶対無理で諦めた。

またカトリックは東京、大阪、長崎の三本部制をとっていますが、大阪大司教区は、あの細川ガラシャが部下に殺させた細川屋敷の跡なのです。

全部御存知だったら、ごめんなさい!
コメント
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関口精一、かく語りき(その4)

2019-08-21 | 石川健治「精神的観念的基礎のない国家・公共は可能か?」
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2019年 8月21日(水)11時12分1秒

意外に長くなってしまった「関口精一、かく語りき」シリーズ、これが最後です。
キリスト教関係者に批判的な佐伯氏が、「現在は、キリスト教の人は関口さんのやり始めたことに便乗している感じですね」と述べると、関口氏は、

-------
関口 アメリカやクリスチャン内部のことは私が今、とかくいう問題ではないとしておくことにします。信教の自由ですから。実は私は最初、クリスチャンの方たちが靖国神社問題に取り組んでいるのは知っていたが、それがこの地鎮祭訴訟に直結してもらうとは思ってもいなかったのです。ところが、共産党を含めて政党関係の人はこの問題にむしろ無関心で、かえってクリスチャンなど宗教関係の人たちといっしょにやって行くようになってしまった。
 どうも革新陣営は、こうした問題についての取り組みは弱いですね。抽象的に「平和」とか「靖国反対」とか叫んではいますが、こういう具体的な問題の実践となるとひじょうに弱い。もちろん共産党は、私がやっているので支持はしていますが、これをもっとひろげたり、各地でやるといった取り組みには弱い。靖国問題にしてもこの地鎮祭問題にしても、ほんとうに軍国主義復活の物理的側面とならぶ大切な精神問題だと思うのですがね。
 そういう中で、いまキリスト教など各宗教の人たちと無神論者がいっしょになって、矛盾をいくつもかかえながらやっているわけですが、これはこれなりに文化的現象としてひじょうに有意義な経験ではないかと思っています。ですから、これを成し遂げれば政教分離をどこで線を引くか、どうルールづくりするかといった点にも一つのメドがつくことになるだろうと思います。
-------

と答えます。(p302以下)
「共産党を含めて政党関係の人はこの問題にむしろ無関心」で、地鎮祭訴訟は「キリスト教など各宗教の人たちと無神論者がいっしょになって」行なわれた点、後で改めて少し論じる予定です。
さて、この後、佐伯氏は「インタビューを終えて」という感想を若干記していますが、そこに出てくるアメリカの著名な無神論運動家・オヘア夫人との比較は面白いですね。

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「米国でもっとも憎まれている女(the most hated woman in the U.S.A.)を自称する女性がいる。公立学校での聖書朗読と主の祈りが憲法に違反するという訴えを起こした、無神論者マダレーン・マレイ・オヘア夫人である。彼女は現在、テキサス州オースチンで SOS(Society of Separation)という反宗教活動を主宰している。アポロ九号の飛行士が宇宙空間で創世記第一章を朗読したのは、憲法違反だとう裁判をおこしたのは彼女だった。キリスト教教会のすべての財産と収益事業に課税せよという運動(TAX CHURCH)を指導しているのも彼女である。
 関口精一氏に会うまで、私はオヘア夫人の日本版を想像していた。しかし、その予想ははずれた。氏は、北大工学部出身の温厚な共産党員だった。インタビューは三時間におよんだが、ここにはその抜粋しか掲げられなかった。政教分離の壁は具体的にどこに設けるべきかという点を私は執拗に追求したが、はっきりした解答がえられなかった。オヘア夫人が断乎として徹底分離を要求しているのに反して、氏が戦術上のさまざまな顧慮からクリアカットな線を引きかねているからであろう。霊柩車についている蓮華の模様を取りはずさせた氏が、郵便局のクリスマス・ツリーを弁護するのは首尾一貫しないのではないか。米国大統領の明治神宮訪問に反対しながら、天皇のウエストミンスター寺院訪問は「外交儀礼」だと主張するのは、おかしくはないか。橿原市の市長室にある神武天皇像を撤去するなら、公園にある高山右近像や日蓮上人像(九州博多)も撤去すべきではなかろうか。【後略】
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オヘア夫人(1919-95)はなかなか強烈なキャラクターで、息子を原告にした「公立学校での聖書朗読と主の祈りが憲法に違反するという訴え」は連邦最高裁での違憲判決を勝ち取っています。
他方、「アポロ九号の飛行士が宇宙空間で創世記第一章を朗読したのは、憲法違反」という NASA を相手とする訴えは却下されたようですね。
1963年に American Atheists という団体を創設し、初代会長となったオヘア夫人は活発に運動を続けますが、その最後は「米国でもっとも憎まれている女(the most hated woman in the U.S.A.)」に相応しい壮絶なもので、二代目会長である息子、そして孫夫婦と一緒に誘拐・惨殺され、バラバラ死体として埋められてしまったのだそうです。
といっても、無神論に反発する連中から攻撃を受けた、というのではなくて、American Atheists の資金を狙った内部メンバーによる犯行で、失踪当初はオヘア夫人らが債権者から逃れるために資金を持ち逃げしたと思われたようですね。
ま、1972年のインタビュー時点では佐伯氏もオヘア夫人の将来など全く知らない訳ですが、オヘア夫人の大胆で苛烈でアメリカンな人生と比べると、同じ無神論者であっても関口氏の人生は和風の穏やかなもののように思えてきます。

Madalyn Murray O'Hair(1919-95)
https://en.wikipedia.org/wiki/Madalyn_Murray_O%27Hair
American Atheists
https://en.wikipedia.org/wiki/American_Atheists
コメント
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