学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

『ハンス・ケルゼン自伝』

2015-10-04 | 石川健治「7月クーデター説」の論理

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年10月 4日(日)09時53分14秒

またまた投稿に間が空いてしまいました。
「窮極の旅」はまだいくつか論点が残っているのですが、騒々しい憲法学者たちの騒々しい夏が終わり、憲法論議も些か季節外れになってしまいましたね。
石川健治氏に道案内をしてもらった清宮四郎の人生を辿る旅もほぼ終点に近づき、今の私は平成25年度宮中歌会始の選者、篠弘氏の

ゆだぬれば事決まりゆく先見えて次の会議へ席立たむとす

の心境です。
「窮極の旅」と並行して、独創的な憲法9条論を展開していた井上達夫氏や井上氏より更に若い世代の法哲学者の著作をパラパラ眺めていて、それなりに面白さも感じたのですが、法哲学は歴史好きの自分の資質にはあまり向いていないようです。
そろそろ西欧中世の装飾写本の勉強を本格的にやろうかな、などと思っています。

日本文藝家協会理事長・篠弘氏の変てこな歌
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/ffbf607c361a3c38d6efe16507b30c93

>筆綾丸さん
>ケルゼン家
全然裕福な家ではなくて、同じユダヤ人の法律学者であっても、ゲオルグ・イェリネックなどとは違いますね。
そういえば『ハンス・ケルゼン自伝』(長尾龍一訳、慈学社)が未読のままなので、早く読まねば、と思っていたのですが、同書の目次を見ると筆綾丸さんの関心に近いものが出ているかもしれません。
何かあれば後でご紹介します。

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『ハンス・ケルゼン自伝』

ユダヤ人法学者の波乱と苦難の生涯
 2006年に発見されたケルゼン自伝(1947年)の長尾龍一教授による翻訳に加えて、同教授による行きとどいた補遺と多くの写真を収録している。
http://www.jigaku.jp/mokuroku17.htm

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

薫修と映倫 2015/10/03(土) 13:38:21
小太郎さん
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%B1%E3%83%8A%E3%82%B8%E3%83%A0
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%80%E3%83%A4%E6%95%99
ウィキによれば(ケルゼン家はウクライナのブロディからチェコに移住した東欧系ユダヤ人の家系である)、ケルゼンはアシュケナジであって、純粋法学の背景にはユダヤ教的な思惟(Denken)があるのではないか、と思われてきて、そう思うと、lex posterior non derogat priori という反時代的なテーゼからは宗教的な匂いすら漂ってくるようです。
「法実証主義を最も厳密な形で採用し、科学的正確さを追求し・・・」(ケルゼンの項)と、「ユダヤ教は信仰、教義そのもの以上に、その前提としての行為・行動の実践と学究を重視し・・・」(ユダヤ教の項)とは、まるで一卵性双生児のように似ていて、ケルゼンの内面において法哲学とユダヤ教は、石川健治氏の論文中の表現を借りれば、ボードレール的にコレンスポンドしている、そんな感じがします。仏教用語でいえば、薫修に近いのかもしれませんね。

http://www.lemonde.fr/culture/article/2015/09/30/le-film-love-interdit-aux-moins-de-18-ans_4778357_3246.html#meter_toaster
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A0%E7%94%BB%E5%80%AB%E7%90%86%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
フランスの国務院(Conseil d'État)は、はじめて知りましたが、日本の映倫に似たような仕事もしているのですね。映倫の現在の副委員長は樋口陽一氏ですか。
仏訳には、C'est un organisme indépendant d'auto censure(自主規制の独立した組織)とありますが、これは、国家権力による検閲では断じてなく、国家意思を揣摩臆測して自ら進んで検閲している独立独歩の組織だ、というフランス風の皮肉なんでしょうね。この組織に憲法学の重鎮を(名目上とはいえ)据えることは、日本国憲法第21条の一部(検閲は、これをしてはならない)と見事に平仄が合い、微苦笑ものです。
コメント
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