歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

“東京家族” ⑦ 豆は背景も辛子は笑いだけ

2013年01月31日 | 映画の話し
一昨日の続きです。

前回は、崩壊だ、変遷だ、と、ダラダラと理屈を捏ねくり回しました。本日は、感覚的な思いをダラダラと書き綴っていきます。

それで、父親の“平山周吉さん”を演じた“橋爪功さん”ですが、何故か?どうしてか?あまり好きな役者ではありません。ハッキリ云って嫌いです。理由はハッキリしません。

何となく、顔つき、からだつき、しゃべり方が嫌なのです。ですから、嫌な役、悪役、敵役を演じた時は、とても、とても、嫌なヤツに見えるのでOKなのです。

いつだったか?戦時中の中国大陸を舞台にしたテレビの単発ドラマで、謎の中国人を演じたときピッタリ嵌っていました。

それとは逆に、あるドラマで落語の名人上手と云われた役を演じたとき、劇中で演じた落語が、誰が、どう見ても、どう聞いても、どう考えても、まったく、落語には聞こえなかったのです。あまり、器用な役者とは思えませんでした。

1941年生まれですから、私よりも9歳年上で現在は71か72歳、前回、計算した周吉の年齢にドンピシャでした。まあ、それが、どうした!と云われても、まあ、そういう事なのです。

今回の周吉役は、それなりにヨカッタと思います。考えてみたら、いつもより、演技が抑制されていたと云うか、癖がなかったと云うか、自然でした。これは、山田洋次の演出です。

癖のある役柄で、癖のある演技は、それなりに、一見、巧い役者に思えたりするのですが、フツウの庶民のフツウのヒトを、フツウに演じるのがフツウでない名優だと思います。

こんなこと、今年亡くなった“名脇役の小沢昭一”も云ってました。でも、小沢昭一は、くせのある役を、くせのある衣装と小道具で、くせのある芝居を見せていたような・・・、何か、そのあたりが、何か不思議なのです。

それで、一昨日紹介した新聞の山田監督へのインタビュー記事で、“叫んだり、絶叫させたりすると、人間の微妙な気持ちを見つめる繊細な気持ちが観客から飛んでしまう”と、語っていました。

母親が亡くなり、病院の屋上で周吉が『母さん・・・死んだよ』と呟くシーンは、かなり、泣けるシーンでした。

それで、お母さんの“平山とみこ役”の“吉行和子”ですが、この方は、それなりに存じているのですが、映画で見たのは、何故か、遠い昔の「キューポラのある街」以来でした。

もう、77歳になるのです。でも、とても、とても、可愛らしい女性だと思います。今回も、優しくて、可愛いお母さんを演じていました。


それにしても、可哀相なのは、長男の医者役を演じた“西村雅彦”です。ホント、まったく目立たず、印象の薄い役柄でした。とても残念、西村雅彦でなくても、ヨカッタ役でした。


奥さんの文子役の夏川結衣も、彼女でなくても、ヨカッタ役です。長男夫婦は、ホントに、あまり、良い役ではありませんでした。夏川結衣はテレビドラマの“遠回りの雨”以来、とても、気になる女優なのです。

それに引き替え、長女の金井滋子を演じた中嶋朋子は、とても良い役でした。キャラクターがハッキリしていたので、とても、目立つのです。物語のアクセントになる役です。


それに夫の“金井庫造”役が“林家正蔵”で、笑いのパートを夫婦二人が受け持っていました。


小津監督の「東京物語」では、この夫婦の役を「杉村春子と中村伸郎」が演じていて、二人が食事をするシーンで、豆ばかり摘んでいる夫に『男のくせに!みっともないわねぇ!豆ばっかり食べて!』と云われるのです。

このシーンが好きなのです。可笑しいのです。そして、夫婦の関係とか、夫の性格とか、が、夫の職業とか、生い立ちとか、いろいろな背景までが、浮かんで来る、そんなシーンでした。

山田監督の「東京家族」では、正蔵が、粉の辛子を自分で捏ね、納豆に大量に入れるのを見て『そんなにイッパイ入れたら頭がおかしくなるわよッ!』と云われ、『もう、とっくに、おかしくなってますよ』と、答えるのです。

それなりに、「東京物語」を意識した、笑いを狙ったシーンで、観客はそれなりに、と、云うか、一番笑いを取ったと思いますが、やっぱり“豆”には勝てませんでした。ただ、笑いだけを誘うシーンでした。でも、正蔵師匠も良い役だったと思います。

まぁ、そんな、ことで、本日は、「東京家族」の、あれや、これや、でした。

まだ、まだ、「東京家族」は続きます。

本日は、“妻夫木聡クン”と、“壇れい”の『感染列島』の録画を観ていて、更新が遅れてしまいました。それにしても妻夫木クンは良い役ばかり、“壇れい”もヨカッタ!、山田監督の“母べい”以来、好きになった女優です。


それでは、また。



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