何故か今頃、気になりだして読んでみました。
『日航123便墜落の新事実・・・目撃証言から真相に迫る』・・・青山透子著、2020年6月20日初版発行、河出文庫800円+税
あの、単独機事故として世界最多の犠牲者を出した航空機事故の、原因を個人で追跡した本です。因みに、著者は元日航客室乗務員、事故機のクルーとは同じグループでの乗務経験あり。事故機にも何度も搭乗経験あり。
著書は他に、
1.『天空の星たちへ――日航123便 あの日の記憶』2010年4月29日発行
2.『日航123便 墜落の新事実――目撃証言から真相に迫る』2017年7月30日発行
3.『日航123便墜落 疑惑のはじまり――天空の星たちへ』2018年5月28日 発行
4.『日航123便墜落 遺物は真相を語る』2018年7月21日 発行
5.『日航123便 墜落の波紋――そして法廷へ』2019年7月12日 発行
の5冊で、今回読んだ本は「単行本 2」を文庫化したもの。
事故は1985年8月12日に発生しました。乗客乗員524名、生存者は4名、520名の方が亡くなられました。今から37年前ですから、当時私は35歳でした。
翌日の13日、その日、お盆なので姉とその子供達2名を乗せ、母の実家に向かう途中、母の妹の家によりました。そのとき、子供達二人を映すためにビデオを回していました。ビデオカメラは会社から借りた、懐かしき、ソニーのベーターマックスです。
その映像に、母の妹が『キューちゃんも乗っていたって、テレビでやってた、可哀想に・・・』との発言が今でも残っています。”キューちゃん”とは、”国民的アイドル歌手”だった”坂本九”のことで、この時はもう人気の頂点からは、かなり下った時期だったと記憶。
それで、事故?の概略は、
東京羽田発、大阪伊丹空港行き、日航123便、乗員乗客524名。機体はボーイング747SR。
123便は、羽田空港を18時12分離陸し、18時24分緊急事態発生し機体コントロール不能に、18時56分「群馬県上野村御巣鷹山」の尾根に激突し大破炎上。
と、なります。
因みに、747SR通称ジャンボ、私も、20数年前に出張の帰り、鳥取から羽田まで乗った記憶があります。そのとき運良く二階席の左窓側だったと記憶。当時、もう、123便の墜落事故の記憶は消えていました。
話しを戻します。事故後の経緯です。
8月12日 事故発生
8月16日 毎日新聞が「圧力隔壁の修理ミスが事故原因」と報道
8月19日 日航整備部長が記者会見で「突風など、何らかの外からの力で垂直尾翼が折れ、それに伴い圧力隔壁が損傷と推測」と”外的要因”を強調。
8月20日 運輸省航空技術部長が「圧力隔壁が事故に重大な絡みがある」と発言
8月23日 現場調査を行った運輸省調査官が「隔壁に大穴はなかった」と発言
9月06日 ニューヨーク・タイムズ紙が、以前尻もち故を起こし隔壁を損傷。その時の「ボーイング社の修理ミス説」との、「米国家運輸安全委員会」の見解を報道。
これ以降、マスコミ報道の論調は、一斉に「修理ミスによる圧力隔壁破壊説」に傾く。
9月14日 日航整備部長がボーイング社の修理ミスを否定
9月17日 現場から梱包搬出の為、圧力隔壁を細かく裁断。事故直後にも救出作業の為として圧力隔壁は、自衛隊により切断されていた。
10月2日 ボーイング社が修理ミスを認めるような発言
10月9日 事故調査委員会の委員長が辞任。理由は縁者に日航関係者がいる為と発言
そして、2年後の1987年に6月19日に、事故調査委員会が調査結果を発表。
原因として「ボーイング社の修理ミスが原因で後部圧力隔壁に疲労亀裂が生じて破壊。それに伴う急減圧が生じた事で、垂直尾翼の中を突風が吹いて吹き飛ばされと事が墜落の原因と”推定”される」
断定ではなく、この「推定」との曖昧さが、のちのち、いろいろと、憶測を呼ぶのです。そもそも、原因の記述が、なんと、なんと、たった6行なのでした。
現場で現物を確認している調査官や、日航の整備部長も、内部からの破壊では無く、外部からの破壊との見解をしめしているのに、なぜか、内部破壊説で決着させたのでした。
内部要因破壊説と、外部要因破壊説の対立。途中、委員長の交代にもこのことが影響していると思います。
事故後の経緯からは、外部要因説主張派と、内部要因説主張派に、かなり、かなりの、駆け引き、暗闘の様子が窺えます。
内部要因破壊説は「事故」となり、外部要因破壊説は、当然「事件」としての可能性が大きくなります。
ここまできて、思い起こされるのが、あの「下山事件」です。あの時の、自殺説・・・生前轢断・・・に対して、他殺説・・・死後轢断・・・の論争です。
下山事件もそうでしたが、この日航123便事故?事件?も、当時の政治状況も背景として、かなり重要になってくると考えます。
著者の青山透子さんも、その点は、それなりに理解し、本書には、それなりの記述があります。
本日はここまで、続きは次回。
それでは、また。