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近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

“東京家族” ② 2012年家族の真実

2013年01月24日 | 映画の話し
昨日の続きです。

「東京家族」は明らかに、『東京物語』の、リメークであり、オマージュであり、リスペクトでした。

小津安二郎の『東京物語』が2012年に世界の監督358人の投票で一位に選ばれたそうです。

“その技術を完璧な域に高め、家族と時間と喪失に関する非常に普遍的な映画をつくりあげた”と評価されたようです。

「その技術」とは、ハード面での、各シーンでの背景、部屋のデザインとか、小道具の大道具の種類配置、演じる役者の配置位置関係、照明の具合、撮影する角度、高さ、カット割り等々が「完璧」なのでしょう。

そして、ソフト面での「家族と時間と喪失に関する非常に普遍的」と評価されている映画です。ハードもソフトも『完璧で普遍』なのです。

そんな、完璧普遍で、世界一位の『東京物語』をです、リメークするのですから、山田洋次監督は、かなり大胆なのです。

「東京物語」は1953年の制作で敗戦後8年経った頃です。軍国主義の時代から、戦後民主主義の時代に世の中の価値観が大きく転換した時代、家族が変わった?時代。

そして、2012年の家族。大震災、大津波、原発メルトダウンで放射能汚染。世の中の価値観は大きく変わったのでしょうか? 

兎に角、山田監督は制作準備の段階で“大震災と原発メルトダウン”に遭遇し、2012年の「東京物語」にするためには、どうしても“大震災と原発メルトダウン”の事実を挿入しなければ、と、脚本を書き換えたそうです。

でも、しかし、作品を見終わった一観客としては、“大震災と原発メルトダウン”は、歴史の出来事として、記録として、本筋とはかなり離れて挿入された、単なる背景のようにしか感じませんでした。

「2012年の東京物語」を、数十年後の観客は、そうか、あの頃に、スカイツリーが完成し、大震災が発生し、原発がメルトダウンし、いろいろあった時代なんだ、と、思うのでしょう。

「東京家族」に描かれている、お祖父ちゃん、お祖父ちゃんの旧友、お祖母ちゃん、娘、息子、娘の夫、息子の妻、息子の恋人、孫達、誰もが平成の“歴史的事件”に影響されているようには思えないのです。

まあ、次男は南相馬で震災のボランテイアをしている時に、出会った女性と婚約したり、旧友の奥さんの母親が津波の被害にあったりとか、それなりには描かれているのですが、単なる挿入話し程度でした。

観客は見終わって、家族ってものは、辛い別れもあるが、それでも、みんな、仲良く、愛し合い、助け合い、励まし合い、泣いたり、笑ったり、寄り添ったり、いろいろあって、イイもんだ! ヨカッタ!ヨカッタ!なのです。

まぁ、それは、それで、イイと思います。観客の感想と、監督の作品への思い、その筋の作品へのの評価とは、たぶん、異なって当たり前?

たぶん、震災も原発も大き過ぎるテーマですし、映画としては、2012年の家族を描いた作品として、後々、それなりに評価される事に・・・・・・。

偉大な「東京物語」に、歴史的事件を刻み込み、2012年にリメークするのは、巨匠山田洋次監督でも、かなりムズカシイ?

でも、しかし、山田洋次監督としては、松竹大船の大先輩の「東京物語」のリメーク版は、どうしても、どうしても、撮りたかったのでしよう。

兎に角、それなりに、気持ち良く観られて、イイ気分で、映画館を後にできる作品です。

ここまで書いて、いま気付いたのです。確かに、事実として、結果として、周りを見ると、あれから2年、具体的な被害を被った人達以外は、世間の家族は、あまり影響されていないのです。

と、云うことは、この作品は、かなり、ありのままに、そのままに、歴史的事件後の“真実”の“東京の家族”を描いている? 

まだ、まだ、『東京家族』の話しは続きます。

それにしても、2時間26分は長かった、心配していたのですが、途中、老夫婦が横浜のホテルに宿泊するシーンで、ついにトイレに行ってしった。う~ん歳です。他にも3人が途中で席を立っていました。

それで、兎に角、「東京家族」は、観て損のないイイ映画です、泣いて笑って、見終わって、それなりに明るい希望の持てる作品です。


それでは、また。


コメント
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