歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑥何故?聡子は憲兵隊に機密文書を渡したのか?

2021年04月30日 | 映画の話し

前回の続きです。

優作との豊かで平穏な暮らしを守ろうとする聡子。

忠誠を誓うのは国ではなく、万国共通の正義だとする優作。

このままでは、二人の関係は破局に向かいます。

 聡子は悩みます。

優作への愛を、優作からの愛を、失わない方法は? 

夫の行動を思い止まらせるのは可能か? 

危険を冒しても、夫と供に、万国共通の正義に協力する?

聡子は、それなりの答えを見つけたのか、優作の出張中に、会社の倉庫から機密書類と、中にあったフィルムを持ち出し、家に帰ってフィルムを映写機に掛け見てしまうのです。

このときは、映し出された映像を見る、聡子の表情だけが描かれます。聡子の表情から、当然、フィルムの中味は、731部隊の残虐行為が記録されていた筈。

『知ったような口をきく。当然だ、君は何も見ていない、何も知らない。僕も君にそれを見せたはくはない。だがそれは起こっている。僕たちの同胞が、その悪魔のような所業を、彼の地で今も繰り返している。僕は見た』

もう、見てしまい、知ってしまった聡子。これで「スパイの妻」として、優作と供に、万国共通の正義に協力する、と、私は思ったのです。

しかし、翌日か、数日後か、何故か憲兵隊に向かう聡子。

えっ!どうして?何しに?と思いました。

このとき聡子は、はじめて和服姿で出掛けます。

以前に、「どうしてこのご時世に、洋装ばかりなのか、世間からはいろいろな眼でみられますよ」と、泰治から忠告を受けているのです。

このときの和服姿は泰治への、愛国者としての、覚悟のサイン?

聡子が話し始めるより先に泰治から、草壁弘子殺しの犯人は、旅館の主人だったことを告げられます。

そして、『それと、もう一つ、これこそお耳に入れておきたかった。優作さんは、草壁弘子が看護婦の勉強をする留学先として、アメリカ渡航の旅券を申請しました。ご自分のを含めて2人分。ご存じでしたか』

たぶん、知らないだろうと思いつつ。これは、事件の背景に重大な機密が隠されている、と、言うよりも、二人には、それなりの男女関係が、と、匂わし嫉妬心を煽る問い掛け。

『存じません』

『何か商売の目的があってアメリカに行くのは自由ですが、どうして、わざわざこの時期に・・・しかも、草壁弘子をつれて。僕はひとえに、あなたのことが心配なんです』

泰治は、聡子が自分へ向いてくれる期待よりも、兎に角、聡子と優作夫婦の関係を悪化させたいだけ?

『それだけですか』

『はい』

『では、こちらの案件を申し上げます。身内の恥と思って、いままで云えずにおりました』

と云って、機密書類を取り出します。

えっ!機密を暴露するの、文雄も優作も権力に売り渡すの? 何故? どうして? どうなるの?

『何ですか』

『ご覧になれば分かります』

『何だ、これは・・・』

この時、泰治は驚きの表情。やはり、草壁弘子事件の背後関係に、重大な機密が絡んでいるとは、まったく掴んでいなかったのです。

単なる「痴情のもつれ」と承知していたようです。ですから、前にも云いましたが、民間の痴情事件に憲兵が動くのは不自然なのです。

でも、しかし、これは『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)ドラマですから、まあ・・・、そこは・・・ね。

『このノートは満州から持ち込まれました』

『誰がこれを』

ここで、このシーンは終わります。

何故、聡子は、満州から持ち帰った機密書類を憲兵隊に差し出したのか?

憲兵隊長の泰治にどこまで、どのように話したのか? 優作とは関わり無く、文雄の単独犯行して?

ここは、本当に、何故?どうして?です。

夫の逮捕も覚悟? でも、それでは、タイトル「スパイの妻」は成立しません。

この後、どういう展開で、聡子は「スパイの妻」となるのか。

本日は、ここまでとします。

 

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻 」⑤ コスモポリタンと小市民の対立?

2021年04月28日 | 映画の話し

前回の続きです。

満州で見てきたこと、聞いてしまったこと、知ってしまったこと、女との関係、託された機密書類。

優作が経営する貿易会社の倉庫。僅かに光が差す暗い空間、聡子と、優作は向かい合います。

『それで? 英訳したノートをどうするおつもりです?』

『この証拠を国際政治の場で発表する。特にそこがアメリカなら、戦争に消極的なアメリカ世論を、対日参戦へと確実に導くことができる』

正義を理由にして戦争は起こりますが、それは単なる表向きのきれい事です。

現在の国際政治も、中国と米国が、世界の主導権を、覇権を、互いに「正義と不正義」を掲げて争っています。

むかしも、いまも、所詮は、勢力争い、経済争い、覇権のぶつかり合い。そして、互いの意思に関わりなく、武力衝突は互いに避けたいと思いつつ、戦争に突入してきたのです。

むかし国力は領土面積に、資源保有量に、おおきく依存していました。ですから国力の向上は、領土の拡大、支配地の拡大、資源の獲得でした。

日本が満州国を建国し、「五族協和」の理想を掲げました。しかし、現実は日本による支配で、満州は植民地で、日本の属国でした。

まあ、帝国主義の時代、遅れてきた日本としては、アジアから欧米を追い出す。言いように寄っては、良いように、欧米からの解放と言い換えられます。

でも、欧米を追い出した後、後釜に座るのは、その地位に就くのは、当然、アジアのリーダー国である日本と考えていたのです。

「八紘一宇」も、それ自体は、思想として、それなりに正しい側面もあるのですが、政策として、実行段階として、あくまでも、その中心は日本国が前提になっています。

どうして、こうも、自己を指導者として疑わず、他の人々を、他の国々を、自らの主張の下に、従わせたいのでしょうか? ある種人間の本能?それとも、人間の「業」か?

「五族協和」も、「八紘一宇」も、「大東和共栄圏」も、またぞろ復活しそうな気がする、きょうこの頃。

それで、話を戻します。

『アメリカが参戦すると、どうなります』

『日本は負ける』

『負けますか』

『遅かれ早かれ必ず負ける』

『それでは、あなたは売国奴ではありませんか』

『僕はコスモポリタンだ』

『えっ・・・』

何を言い出すの!こいつは! という表情の聡子。

『僕が忠誠を誓うのは国じゃあない。万国共通の正義だ、だからこのような不正義を見過ごすわけにはいかない』

二人は、厳しい表情で、激しい言葉で、感情的にぶつかり合います。

『あなたのせいで、日本の同胞が何万人死ぬとしても、それは正義ですか?私までスパイの妻と罵られるようになっても、それがあなたの正義ですか?私たちの幸福はどうなります』

高尚高邁な理想を述べる夫、現実的な妻。ここでタイトルの「スパイの妻」が否定的な言葉として出てきます。

『不正義の上に成り立つ幸福で君は満足か』

『私は正義よりも幸福をとります』

『ハハハハッ 知ったような口をきく。当然だ、君は何も見ていない、何も知らない。僕も君にそれを見せたはくはない。だがそれは起こっている。僕たちの同胞が、その悪魔のような所業を、彼の地で今も繰り返している。僕は見た。多分あらゆる偶然が僕を選んだんだろう。だとしたら、もう、何かしないわけにはいかない』

いつもの優作にしては、感情を露わにし、聡子を見下すような発言。

『あなたも文雄さんとおんなじ、すっかり変わってしまった』

『いや、これが本当の僕だ』

ここで、聡子も、感情を露わに、見下すように、

『いえ、私には分かっています。あなたを変えたのは、あの女です!あの女が、その胸に住み着いたんです。ええ、私は何も見ていません。それが何だと云うのです。国際政治がどうとか、偶然が選んだとか、そんなの知ったことじゃありません』

やはり、聡子は、優作と連れ帰った女との関係を疑っているのでした。

平穏で豊かな暮らしが危うくなる事への不安、優作が偉そうな事を云っても、そもそもは、所詮は、事の始まりは、単なる男と女の関係からと、聡子は優作が許せないのです。

『それは、絶対!そうなんです!』

吐き捨てるように言って、倉庫から出て行く聡子。

これで、このシーンは終わります。

これでは、二人は破局へと向かいそうです。聡子が「スパイの妻」にはなりません。この後、同展開するのか?

本日は此処までとします。

 

それではは、また。

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」④森村誠一で「悪魔の飽食」で731部隊!

2021年04月25日 | 映画の話し

前回の続きです。

優作以外には絶対に見せるなと云われた書類を、優作に手渡す為に会社に向かう聡子。

それで、ちょっと戻るのですが、書類を携えた聡子が、監視している5人の憲兵の間を通るシーンですが、憲兵が黙って見過ごすのは何か変です。

監視対象である文雄との面会目的は?何か頼まれた事はないか?それなりに尋問される筈です。監視対象ですよ! 

そもそもです。文雄が旅館に籠もって何をしているのか?ただ外で見張っているだけなのは、ありえません。踏み込んでのガサ入れは当然。

まあ、それは、それとして、優作の会社に着いた聡子は、就業時間が終わり、社員が退社した後、倉庫で、

『文雄さんから預かりました。英訳が終わったそうです』

と云った後、優作が受け取ろうとすると、手渡すのを拒み、

『やはり知らなければ、何も信じることはできません』

と、云って、書類に目を通すのですが、中味を理解できるとは思えない早さで、ほんの数秒間でページをめくり終わるのです。

観ている私には、図解から何か医学的な実験資料?としか見えませんでした。聡子も内容を理解するのは困難だと思われます。

しかし、優作は「危うい事情」が知られたとして、慌てて書類を聡子の手からつかみ取り、黙って金庫の中に仕舞うのです。

そして、危うい事情を知ってしまったように、聡子は、

『聞かせて下さい』

『何から話せばいいか』

『最初から』

優作は観念してしゃべり始めます。いままで真実を語るのを頑なに拒み、信じろとしか云わなかったのに、かなり、あっさりとしゃべり始めるのです。

『僕と文雄は釜山から満州国へ向かった。首都の新京は華やいでいたよ。・・・・・・それから僕たちは特別な許可を貰って関東軍の研究施設へ向かった。医薬品の便宜を打診する目的だ。途中車の窓から所々に小さい山が見えた』

『最初それは廃棄された農作物の山だと思った。近づくと山からたくさんの手足が生えていることに気付いた。山は煙を出していた。人間の死体が焼かれていたんだ。それは、ペストによる死体の山だった』

『それから僕たちは、行きがかり上ひとりの女の命を救うことになる。君も知る草壁弘子だ。彼女は看護婦で軍医の愛人でもあった。彼女は僕たちに、このペストの流行は関東軍の細菌兵器によるものだと告げた』

行きがかり上で知り合った女が、見ず知らず者に軍の最高機密をそう簡単にはしゃべらないと思います。

『ここで、ペスト菌の人為的な散布による生体実験を秘密裏に行っていると。それを内部告発しょうとした軍医は処刑され、弘子の身にも危険が迫っていた。なぜなら弘子は軍医から託された動かぬ証拠を持っていたからだ』

「軍医は処刑され、弘子の身にも危険が迫っていた」こんな状況で、密かに秘密書類を持って満州を脱出したのはかなり不自然。

『それが、あの実験ノートだ。君が文雄から受け取ったのは、そのノートと英訳した、もう一冊だ。そこにはペスト菌の散布だけではなく、捕虜を使った生体事件の様子まで克明に記録されていた』

『こんなことは、決して許されるものではない!』

ここまでで、オッ!これは!あの!『関東軍防疫給水部本部』、通称『第731部隊』の話ではないか! そんな展開になるとは、想定外でした。

ここで、確か?むかし読んだことが?と、本棚に向かったのです。

ありました!『悪魔の飽食』です。

著者は推理作家の「森村誠一」で、初版が昭和56年11月30日、私の手元にあるのは11刷りで、翌年の2月20日となっています。

概要はそれなりに記憶していますが、当然、細かな記述の記憶はありません。昭和56年ですから、1981年で、40年も前の事で、30歳の頃です。

敗戦後、36年の歳月が流れた後の発行です。当時、かなり話題となり、ベストセラーとなりました。731部隊が世に知られたのは、この本によってでした。

それで、ちょこっと、Wikipediaを覗いてみたら、ノンフィクションを騙った「フィクションだァ」何て記述もありました。

確かに、フィクションと突っ込まれるのは、証拠資料に乏しく、見つかった資料も間接的なものであったり、証言も実験当事者ではなく、周囲の人間の「私は見た」「私は聞いた」的な証言なのです。

まあ、当然、生体実験の記録、実戦使用の記録は焼却した筈ですし、実験当事者、部隊の責任者は、当然、何も語りません。

戦後、差し障りのない部分が米国に渡されました。それでも、その記録を見て、米国の学者は「ここまでは我々には人道的にできない。非常に価値のある実験」との証言しています。

話を「スパイの妻」に戻します。

それで、恐ろしい真実を聞いた聡子は、

『それでどうするの』と問います。

え~、話が長くなりましたので、この先は次回とします。

本日はここまで。

それでは、また。

 

 

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」③精神的にも肉体的にも追い詰められた文雄!

2021年04月22日 | 映画の話し

前回の続きです。

殺人事件が発生し、その被害者は満州から夫が連れてきた女性と聞かされ、夫優作を問い詰めても、自分を信じろとしか云わない優作。

夫を疑う聡子は、一緒に行った甥の文雄の居る温泉宿に行き、何があったのかを聞こうとする。

出迎えた旅館の主人が『文雄さん、ほんま見違えましたな、以前とはだいぶお変わりのようで驚きましたわ』の言葉には反応せず。

その話を遮るように『この二ヶ月主人が何度もお世話になって』と、しかし、主人は『何のこっちゃ?』との表情。

これは優作が、女と密会の為に、逢瀬のために、度々旅館に訪れていたのでは?との、問い掛けですが、何故か、主人の反応を確認せず、文雄の部屋に向かうのです。

これって、聡子が亭主の浮気を確信しているとの表現? そして、浮気は浮気として、それなりに確信しているが、それ以上に、隠している 背後の危うい事情に不安を抱いてるとの表現。

そして、文雄に、男女関係を、危うい背後関係を、問い質す聡子。このシーンのはじめの数カットから、風の音がBGMのように流れます。

ここで気が付いたのですが、ここまで冒頭から40数分、音楽は流れていなかったのです。この監督の手法なの?音楽はあまり使わず、映像と台詞だけの構成。音楽がない方がリアリティは感じます。

それで、文雄を問い質す聡子。

『本当のことを教えて下さい』

『本当とはなんです』

『草壁弘子を殺しましたか』

『バカなことを』

『何故、満州から連れてきたのですか』

『かわいそうだからですよ。放っとけなかったからですよ』

『あなたと主人の、どちらが、彼女を放っとけなかったんですか』

『これはまた、ご自分の連れ合いを疑ってらっしゃる』

『優作さんを疑ってなんかいません。ただ私は、事実が知りたいんです』

『事実、憲兵にいれ知恵されましたか。愚かだ』

文雄は優作から、聡子が殺人事件で憲兵隊に呼ばれた事で、秘密を知られたのでは?と、不安になっている。 

『愚かで結構。でも、あなたのしていることが、主人の立場を危うくすることなら、それは、なんとしても止めて貰わなければなりません!』

『やめる。どうやって』

『やっぱり。あなたたちは何か危ういことに関わってらっしゃるんですね』

『あなたは一度でも、叔父さんことを理解しようとしたことがありますか?どうして、おじさんの本当の気持ちを分かってあげないんです!』

『なんのこと』

『あなたはなにも分かっていない!あなたは何も見なかった。あなたに分かりようが無い!』

息づかいも荒く、激しく、大声で怒鳴る文雄。精神的にも、肉体的にも、かなり追い詰められている様子。

文雄の異常な様子に、二人が隠している背景の重大さに気付く聡子。

『私が見なかったものとは、何です?』

ここで、文雄は我を取り戻し。

『失礼しました。・・・何も知らない者にこそ、僅かな希望があるのかも知れない。・・・これをあなたに託します。・・・。決して開封せず叔父さん以外の誰にも渡してはいけない。僕はずっと憲兵に監視されています。ここを一歩も出ることができません。「英訳がやっと終わった」。叔父さんにはそう』

『そう伝えればいいのですね』

『ええ。さあ、もう行って下さい。・・・・・・お元気で』

このカットから初めて、バックに音楽が流れます。

旅館を見渡せる橋の上には私服の憲兵が5人。彼らの間を、託された書類を持って夫の会社に向かう聡子。

書類の中味は?この書類に危ういことの真相が!

それで、殺人事件の背景には、何か重大な事実があると疑う憲兵。文雄だけが監視されるのは、不自然です。

二人を殺人事件の容疑者として逮捕し、激しく取り調べるとか、家宅捜査をするとか、それをしないのは不自然です。まあ、それでは、ドラマとしては・・・ですから。

まあ、そう言う事で。

本日は、ここまでとします。

それでは、また。

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」②痴情のもつれで憲兵隊は動きません!

2021年04月19日 | 映画の話し

前回の続きです。

二人が満州から連れ帰った元看護婦が殺され、物語が動き始めます。

まず、ここで、幼なじみで憲兵の泰治が、聡子を憲兵隊に呼び、

①旅館の仲居が殺された。

②その仲居は満州で看護婦をしていた。

③満州から連れ帰ったのは優作と文雄。

④看護婦を旅館に仲居として世話をしたのは優作。

⑤この事件は「痴情のもつれ」と思われる。優作が潔白であることは調査済み。

⑥旅館に投宿している甥の文雄への疑いは残っている。

そして、この事件がどう動くかは、未だ分からない。あなたを呼んだのは、あらかじめ心構えして頂きたかったから。

そして、あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています。

と、聡子は泰治から告げられたのです。

こう言われれば、仲居と亭主との関係を当然疑います。聡子と優作の関係に、それなりの亀裂が走ります。

『あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています』と、これは泰治が、聡子と優作の関係悪化を期待しての言葉。

『我々は注視している』と云っていますが、「わたしは注視している」だと思います。

そもそもです。このような民間の「痴情のもつれ的」事件に、憲兵隊が動くことはありません。優作と聡子が絡んでいたから、憲兵の泰治が動いたのです。

そういう解釈を期待してのシーンだと思います。

話はそれますが、それにしても、このシーンですが、階段ホールに、あたかも部屋のよなセットを組み撮影しています。かなり違和感がありました。

それで、帰宅した聡子は、映画を観に行ったのは嘘で、本当は憲兵隊の分駐所に行っていたと告げるのです。

『泰治君が、僕には内緒で』と云っただけで、何故嘘を付いたのかは問わない優作。

「僕に内緒で」と「嘘を問わなかった」ことで、優作が、単なる痴情のもつれだけで無く、憲兵隊が何かを掴んで、動いているのでは?との警戒心を暗示させるカット。

連れ帰った女との関係を問い詰める聡子。

『仲居の事は?彼女は亡くなりました。』

『知っている。だが、それは君が必要のないことだ』

『何故です』

『君に無駄な心配はかけない、それが僕の信条だからだ』

『だとしたらそれは失敗です。やはり、草壁弘子とは知った仲なんですね』

『おい、ただちょっと向こうで知り合っただけだ、それ以上は何もない』

『泰治さんは、あなたがその女を連れ帰ったと云いました。お願いです本当のことをおっしゃて下さい。こんな気持ちは結婚していらい始めてです。急にあなたのことが分からなくなりました』

『問わないでくれ、後生だ』

『やっぱり・・・』

『僕は断じて恥ずべきことは何もしていない。ただ僕は君に対して、嘘をつくようには、できていない。だから黙るしかない』

『そんなの嘘と変わりません』

『君がどうしても問うならば、僕は答えざるをえない。だから、問わないでくれ。僕と云う人間を知ってるだろう。どうだ、信じるのか? 信じないのか?』

『ひきょうです、そんな言い方・・・・・・信じます』

『ありがとう』

『信じているんです』

『この話はこれで終わりだ。いいな』

これでこのシーンは終わります。

問うな!疑うな!君には関係無い!信じろ!これでは、聡子に信じろと云っても無理があります。

信じたいと思うが、信じられない聡子。二人の関係に亀裂が走ります。泰治の期待道の展開。

次のシーンで、今度は、聡子が優作に問い詰められるのです。

『この氷どうした。泰治クンは君にほれている。神戸にやってきたのもその為だ。君は、本当に気付かないふりをするのが得意だな。僕の方は君に嘘をつくようにはできていないというのに』

次のカットで、殺された仲居が登場。そうです。これは聡子の夢のなかのシーン。

聡子の心の動きを、思いを、疑いを、不安を、夢のかたちで描かれるシーン。

仲居と優作が、ベットの上でじゃれ合いつつ、

『優作さんて、ホント、嘘の付き方お上手』

『そうか』と云って、二人は声を上げて笑う。

この夢は、以前、優作が満州へ出掛けて留守の際に、女中を連れて、自然薯採りに来た聡子と、ウィスキーに入れるための、天然氷をとりに来た泰治が、偶然、近所の山の中で会った時の事が重なっているのです。

家に旨い舶来のウィスキーがあるから、帰りに寄って下さいと誘った聡子。一瞬、間を置いて『分かりました後で伺います』と応えるのです。

一瞬の間は、聡子の誘いの意味を、優作の事を口にしてないことで、もしかして留守? 亭主の居ない家に誘う意味を、そして、儚い期待も・・・、そんな事での、一瞬の間。

そして、二人でウィスキーを酌み交わすシーン。

『優作さんがご在宅でないなら寄りませんでしたのに』

これは、本音半分、嘘半分。

『そんな気がしたので云わずにおきました』

『聡子さんは楽しく過ごされていますか?』

『夫がいない間はもちろん寂しいです』

『それはどういう意味です』これはかなり露骨な質問。

『どういう・・・?フフッ、表も裏もありません』

『そうですね、あなたそういう方だ』

主人の留守に酒に誘う聡子に、忘れようにも、忘れさせないそぶりに、いまでも、聡子への思いが消ないことを意識する泰治。

総子の曖昧な態度に、これまで、泰治は苦しんできたのです。そのことは聡子も薄々は気が付いているのです。

そして、亭主の優作も泰治の気持ちを、それなりに気付いている、と、感じている聡子。

聡子と泰治は幼なじみであり、その後も、それなりの友人関係を保っているとの、設定ですが、詳細は描かれていません。

泰治と聡子の友人関係の中に、優作が登場し、優作と聡子が恋愛関係となり結婚。この過程は観る人の想像に任せています。

わたしとしては、聡子の結婚を機に、泰治は職業軍人の道を、自分の意に反して選択したと思います。過去の自分を、聡子への想いを、断ち切るための選択として。

そもそも「自分は取り調べは好きでは無い」と云ったり、聡子に「泰治さんに軍服は似合わない」と云われたり、泰治は軍人に、憲兵に、向いて居ないのです。

それでも、軍人を選択したのです。可哀想な泰治クン。わたしとしては、泰治クンに感情移入してしまいます。

本日はここまで。

次回より物語は激しく動き始めます。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』の背景としては、かなり残酷な歴史的事件が・・・。

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」①いろいろ疑問な事が!

2021年04月17日 | 映画の話し

先日、録画して置いた「スパイの妻」を見ました。

放送日(4/12)の3・4日前に、番組宣伝を見て予約しました。そのとき、あれ!と思ったのです。

「ドラマ・スパイの妻」となっていたのです。「映画・スパイの妻」とは違うの?

私がこの作品を知ったのは、去年の「ヴェネツィア国際映画祭」で銀獅子賞を受賞したとの報道でした。

見た後で知ったのですが、この作品はNHKBS「8K」の2時間ドラマとして、20年6月に放送され、その後、劇場版としてリメイクされたようです。

「BS4K」での放送ならば私の目にも止まったのですが、「BS8K」放送は一般家庭では、ほとんど見ませんと云うか、見られません。

まあ、そんな背景は、それは、それとして、見終わって、とても、とても、良くわからない事と云うか、疑問な事が、多々或のでした。

それで、作品のテーマとしては、『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHKページから転載)

1940年代の太平洋戦争前夜から、敗戦までの5年間を、神戸を舞台として描かれています。

貿易商を営む勇作(高橋一生)、その妻聡子(蒼井優)。優作は、社員で甥の文雄を伴い満州へ。

帰国後、甥の文雄は突然、社の忘年会で「満州で実際の戦争を目にし、いつ招集されかも知れず、その前に、何か後世に残る作品を書きたい」と、有馬温泉の旅館に籠もると宣言。

そして、殺人事件が発生。被害者の女性は、文雄が投宿している旅館の仲居。

ここから、物語が動き出します。

ある日、聡子は神戸の憲兵隊で、分隊長をしている幼なじみの津村泰治(東出 昌大)に呼び出されるのです。

殺された仲居は、満州で看護婦をしていた事、最近急に帰国した事、連れてきたのは夫の優作、旅館に紹介したのも優作。

優作は事件に関与していないことは、調べが付いている。疑われているのは甥の文雄。

と、幼なじみの分隊長の津村から告げられ、聡子は夫に不信感を募らせるのです。

それで、

疑問①、待ち望んでいた勇作と文雄の帰国を、神戸港に出迎えに行った聡子。聡子が勇作と人前で激しく抱擁するカット。

疑問②、優作と聡子の脇を、美しい女性を伴った文雄が通り過ぎるカット。聡子は出迎えの時、文雄に会っていない。

そもそも、出迎えに行った聡子が、文雄の存在をまったく気に止めず抱き合うのは不自然。

帰国の遅れを知らされた時、文雄の母親を気遣い、手紙したためていた聡子が、出迎えで文雄に会わないのは不自然。

戦前、男女が人前で抱き合うことは有りえないと思います。これは、女性と文雄が通り過ぎるのを、聡子が気付かないのは不自然なので、敢えて、不自然な抱擁カットを入れた?

そして、殺人事件が発生。

被害者は旅館の仲居。

ここから、物語が展開します。

きょうは、ここまでとします。

おじさんの惚け防止に、ここまでお付き合いされた方に感謝します。

ドラマを見て、いろいろ詮索するのは、とても、とても、惚け防止になります。

それでは、また、次回も宜しく。

 

 

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COVID-19でマンボウで!年内終息で!ワットチャンネル!

2021年04月09日 | 世間話し

お久しぶりです。

4月になり桜も散りました。

ウグイスの声を聞いたのは、数週間くらい前だったような?

ツバメの姿を目撃したのは、数日前だったような?

茶色い枝だけだった紫陽花も、葉っぱに包まれて緑に変化しました。

世の中は、明るく、色とりどりで、賑やかな季節となり、COVID-19も活発に動き始めました。

我が国での対策は、相も変わらず、マスクをしろ、手を洗え、うがいをしろ、外出を控えろ、密を避けろ、だけを叫び続ける、だけ、のようです。

欧米の感染者数と比較して、我が国の状況は、一桁~二桁少ないので、専門家にも、政府にも、国民にも、それほどの緊迫感が無い?

東南アジアとの比較では、日本は断然トップに位置しています。

先日、気になる研究発表を目にしました。感染者数と肥満に関係があるとの見解でした。

そう云われてみると、確かに、そんな気がします。テレビを見ていても、欧米では、そして中米でも、男女ともに中高年方々は、デブ、いゃ失礼!肥満の方がほとんどです。

欧米の肥満比率は60数%で、中米?、アジアでは10%以下だそうです。そもそも、肥満は「肥満症」で、間違いなく、疑いなく、病気なのです。

因みに、わたくしのBMI値は「19.96」です。「25」を越えると肥満と判定されるそうです。

たぶん、これが、「ファクターX」の、ような気がしてきました。

それにしても、「蔓延防止等重点措置」略して「マンボウ」ですが、この略し方、この音の響き、まさしく本質を表しています。

「緊急事態」では、見た目として、言葉な響きとして、意味として、かなり重すぎるとして、それなりに「軽い」表現として、軽い響きとして、実態を誤魔化す為の方策でした。

しかし、思惑以上に軽いイメージとして受け取られ、最近では、ちょっとヤバイ!となり、尾見茂先生も「私は使わない」なんて言い出しています。

すべては、当然、オリンピック利権の為、支持率の為、政権維持の為。

COVID-19でのパンデミックが、オリンピックの開催と重ならなければ、日本の対応も、それなりに異なっていた筈です。

ホント! オリンピックは、商業主義を排し、開会式の、閉会式の、馬鹿騒ぎを排し、純粋にスポーツの祭典として、ギリシャのアテネで永久開催がいいと思います。

でも、毎回の開催地争いは、IOCにも、開催招致国にも、とても、とても、旨味があり、手放すことができないのです。

それで、きょうから東京も「マンボウ」が発令されるようです。緊急事態宣言は、これまでのように、感染が「頂点」に達した時に発令されます。

菅自公政権にパンデミックの終息は期待できないので、ワクチン頼み? まあ、年内には何とかなるような?ならないような?

兎に角、百年前のスペイン風邪でのパンデミックは、ほぼ二年で終息しているので、COVID-19も今年の暮れ頃には、そろそろ終息するような、そんな気がします。

それで、最近嵌まっているYouTubeチャンネルは「ワットチャンネル」です。

WHT channel【ワットチャンネル】 - YouTube

アメリカはオハイオ州コロンバスに暮らす、バイリンガル家族の日常が、とても、とても楽しいのです。

お父さんがアメリカ人で、日本語はかなりペラペラで、お母さんは日本人で、英語は、そこそこペラペラ。家庭内での会話は日本語が主。

長女のレン8歳、次女のハリー5歳、長男のテラ1歳。長男は1歳ですから言葉はほとんど無理。長女と次女は、年相応に英語も日本語も、喋れて、読めて、書くことができます。

お母さんが大阪で、お父さんも大阪で暮らしていたので、日本語は関西弁が混じります。

一家5人の繰り広げる日常が、とても、とても堪らなく楽しいのです。

まあ、そんなところです。

これで、久しぶりの更新を終わります。

 

それでは、また。

 

 

コメント (1)
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