少年の手の頼りなく別離をむしる骨ぞ痛まし
かつて今互みに熱を測りし手の触れ合はざりし恋の残るか
なぜと問ふ呼吸のまへに汝(な)の迷ひ全てのみこむ海とならまし
夕映えのせめて恋しき背骨ひとつひとつ数へて巻貝となる
ひきしぼる髪の重さを手に想へなぜあの夏の扉を閉めた
果つるとも声つなげたり海は深くかなしみさへも絆となして
逆光は互みのまなざし遮りぬ禁色の海は永遠にまばゆし
失ひし現在は風あらぬものを求むるからに愛し合ひたり
追憶は海と等しい虹となれ触れず触れたる君だけが渚
爪の痕砂浜ならばながからむ崩るるままに桜貝散らせ
さいきんの歌い溜めたつぶやきたち。
読者は、私の歌を好きになってくださいますか?
これらの恋歌は、処女作「海の器」の主人公、樹への歌です。
私の理想のセンシティブで、情熱的、まっすぐで、屈折し、優しく、激しく、純な美青年を造形しました。
私は今も、自分の造形した彼に恋しています。
港の人社から刊行されています。
自作挿絵、装画。
物語に登場する樹も、冴も、当時私の現実には、いませんでした。もちろん今も。
鎌倉賛歌、由比ヶ浜賛歌でもあります。
みなさんの詩ごころに、私の歌がシンパシーしてくれたら、と願います。
これも旧作。