ギリシャ神話あれこれ:ラオダメイアの愛

 
 子供の頃読んだ四コマ漫画に、“ダッチ・ワイフ”というのが出てきた。俺、結婚することにしたんだ、だから、さようなら、と、女を崖から海へと突き落とす男。それを遠くから見咎めた別の男が、何てことするんだ! と駆け寄って、海を覗くと、ダッチ・ワイフがプカ~と浮かんでいた、という話。
 で、母に、“ダッチ・ワイフ”って何? と尋ねたところ、母は眼を白黒させてから、答えた。「それは多分、英語ね」……
 当時私の家には、信じられないことに、英語の辞書が存在しなかった。中学生になってようやく、私は“Dutch wife”を調べてみることができたけれど、辞書には載っていなかった。……

 プロテシラオスは新婚ほやほや。が、花嫁ラオダメイアを迎え、一夜過ごした翌日、トロイアへと出征することになる。

 ギリシア軍の船隊がトロイアの海岸に到着したとき、真っ先に降り立ったのはプロテシラオスだった。で、当然、物陰に待ち構えていた敵勢は、それを目がけて一斉に、槍を投げるやら矢を射るやら。
 こうして、彼はギリシア戦死者の筆頭となる。もともと、最初にトロイアに上陸した者は死すべし、という予言があったんだけれど。

 ところでプロテシラオスは、出征で多忙を極めていたので、結婚後にアフロディテに感謝を捧げるのをすっかり忘れていた。アフロディテはこれを恨み、プロテシラオスとラオダメイアに、互いに対する永遠の愛を吹き込む。

 さて、プロテシラオス戦死の訃報を知ると、ラオダメイアの父は、仕方のないことと諦めて、娘を他の男に嫁がせようとした。が、彼女は頑なに拒絶する。アフロディテの呪いで、死んだ夫への愛がなお、めらめらと燃えていたわけ。

 To be continued...

 画像は、G.W.ジョイ「ラオダメイア」。
  ジョージ・ウィリアム・ジョイ(George William Joy, 1844-1925, British)

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