ギリシャ神話あれこれ:怒れるアキレウス

 
 トロイアでは早9年の歳月が流れた。そして10年目。

 トロイア軍はイリオスの都城に引き上げ、一方、ギリシア(=アカイア)軍は浜辺に船陣を張って、両軍は日毎に兵を繰り出し、スカマンドロス河畔の平原で戦闘を繰り広げていた。神々が築いたイリオスの城壁は難攻不落で、戦闘は膠着、ギリシア軍は戦争に倦み、近隣を劫略した。

 あるとき、略奪によって得た多くの戦利品のうち、二人の美しい娘がそれぞれ、総大将アガメムノンと英雄アキレウスとに贈られた。アガメムノンが貰った娘はクリュセイス、アキレウスが貰った娘はブリセイスといった。
 が。
 クリュセイスの父はアポロン神殿の老神官だった。彼はギリシア陣営を訪れ、莫大な身代を差し出して、娘の返還を懇願する。
 諸将たちが神官に敬意を表するなか、総大将アガメムノンだけはこれを嘲り、罵って、手荒く追い返した。とっとと帰れ、老いぼれめ!
 
 あまりに悔しい老神官、アポロン神に、ギリシア軍への復讐を祈願する。
 アポロン(彼はヘクトルを寵愛していたため、トロイアに味方している)はこれを聞き入れ、ギリシア陣営に得意の疫病の矢を放つ。疫病は瞬く間にギリシア陣営に蔓延し、兵たちは次々と倒れていった。

 ギリシア軍の老予言者カルカスは、クリュセイスを老神官に返還しなければ、アポロン神の怒りは解けまい、と進言する。

 To be continued...

 画像は、ゲラン「アガメムノンと言い争うアキレウス」。
  ピエール=ナルシス・ゲラン(Pierre-Narcisse Guerin, 1774-1833, French)

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