銀玉生活

 
 買い物に行ったりしてお金を使うと、相棒が必ずこう言う。
「ダマ、見せて」
 ダマとは硬貨のこと。相棒の奴、発行枚数の少ない発行年の硬貨を捜しているわけ。
「珍しい1円玉は、流通貨幣という使用価値としては1円の価値しかないけど、古銭としては100円の価値を持つ場合だってあるんだよ!」というのが、相棒の主張。

 で、硬貨をいちいちチェックして、「アタリ」を見つけると眼をピカッ! と光らせてそれを引き抜き、キレイなものはハンカチやら何やらでキコキコと拭いて、シートに入れて取っておく。いずれ、コイン商へと持って行くつもりらしい。
 ケチをつけると、こう言い返す。

「5円玉が10円で売れるんだよ。1円玉が100円で売れることだってあるんだよ。資産が100倍になるんだよ! 大事なのは額じゃないよ、率だよ。合理的な経済観念持ってないと、世界の子供たちの医療・教育支援なんてできないよ!」
 ……でも、レアな1円玉を1千万枚集めて、1千万円を10億円に変えるのは、ちょっと無理があると思うんだけれど。

 で。どういうことになるかというと、こういうことになる。
 買い物の際には、札で払う。で、釣り銭、つまりダマをゲットする。それを全部チェックして、「ハズレ」はまとめて空き瓶に集めておき、後日、郵便局の窓口でジャラジャラと数えてもらった上で貯金する。で、またそれを札で引き出して、同じように買い物してダマをゲットし、チェックする。……
 これだと、手持ちの使用可能なキャッシュのなくなるのが、速いこと、速いこと。相棒は100円玉も500円玉も、平気で空き瓶に突っ込むが、私はそれを引き抜いて使う。

 銀玉の購買力、侮るなかれ。これでかなりの期間、買い物を続けることができる。

 画像は、V.デュブルイユ「お金の樽」。
  ヴィクトル・デュブルイユ(Victor Dubreuil, active 1886-ca.1900, French)
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