世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
ギリシャ神話あれこれ:キュパリッソスの死
西洋絵画にはよく糸杉が出てくる。特にゴッホはよく描いている。ゴッホのうねるような糸杉は印象的。
で、美術館で糸杉の絵を観たとき、周囲に誰もいないのをいいことに、糸杉に似せた踊りを、相棒の前で見せたことがある。一度だけ。
胸の前で両手のひらを合わせ、そのまま腕を頭の上にすっくの伸ばしてから、ウェーブのようにくねりと一回身体を揺らす。名づけて「糸杉ダンス」。これには相棒、大ウケ。
以来、いくらせがまれても、二度と踊っていないのだけれど、ヨーロッパのホンモノの糸杉を見せてくれれば、踊ってあげてもいいかな。
キュパリッソス(サイプレス)は真っ黒な瞳をした美少年で、ヒュアキントスと同じくアポロン神の寵童だった。
生来、彼は獣が大好きで、殊に一匹の牡鹿を兄弟のように可愛がり、誇りとしていた。
アポロンというのは、美しい上に、運動競技などを好んで活発に野を駆けめぐる少年がタイプらしい。キュパリッソスも、あるとき槍投げに興じていた。で、木立のなかに勢いよく槍を投げたところ、そこに泉の水を求めてやって来ていた彼の牡鹿に、命中してしまう。
手違いとはいえ、大切な牡鹿を刺し殺してしまった彼は、ひどく悔い、悲しんで、アポロンの慰めにも耳を貸さずに、ひたすらに自分の死を願う。永遠に牡鹿の死を嘆き続けたい、と望む。
やむなくアポロンは、キュパリッソスの願いを聞き入れ、彼の姿を糸杉に変える。糸杉は死者を哀悼する木で、墓のそばに植えられるのだとか。
アポロンて、鹿と秤にかけられて、負けちゃったわけ。
糸杉って、死者を悼む木だったんだねえ。軽々しくダンスなんてしないほうがいいかも。
画像は、デュビュフ「アポロとキュパリッソス」。
クロード・マリー・ポール・デュビュフ
(Claude Marie Paul Dubufe, 1790-1864, French)
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