三位一体社会(続)

 
 以前、「今、日本は急速にファシズムに向かっている。早く海外に脱出しなければならない」と言ったとき、こんな説教めいた反論をされたことがある。
「あなたのように意識の高い方が、自国をなんとかなさろうとされずに、安易に海外へ逃れようとなさることに、遺憾の意を禁じ得ません」
 私はこう答えてやりたかった
「あなたこそ、もっともっと意識が高けりゃ、私と同じことを考えるでしょうよ」

 世界には、より自由な生活を営む人々が存在し、また、より困難な状況を抱える人々も存在する。自分がそこに生まれたという理由だけでそこに住んできた国を、まず第一に基準とし、その枠内で力を割かなければならない理由など、どこにも見当たらない。
 
 意識の低い人々を啓蒙しなければならない、という意見もある。が、途上国の子供たちを教育するならいざ知らず、自分や、相棒や亡き友人や、弟や、そのほか少数の人々が、同国という同じ条件のもとで獲得し得た認識を、どうしてわざわざ教えてやらなければならないのか。
 私は、同国の人々を高めるくらいなら、その同じ力を、途上国の子供たちと、自分自身とを高めるために使いたい。

 そして、もし私と同じように考え、日本というこの仮面の国を脱出したいと思う人があるなら、私はその人にエールを送りたい。
「おめでとう。一足先にいってらっしゃい。私もあとからすぐに行きますからね」と。

 画像は、ステヴァンス「日本の仮面」。
  アルフレッド・ステヴァンス(Alfred Stevens, 1823-1906, Belgian)

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