チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

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第117話 B.C.G.

2007年10月05日 | チエちゃん
 昭和40年代のあの頃、年に2~3回は、学校で予防注射があったように覚えています。
特に、毎年必ず行なわれたのが、ツベルクリン反応注射とBCG接種です。

 ツベルクリン反応注射というのは、結核菌感染による免疫ができているかを調べる検査ですが、俗に豆注射と呼ばれ、腕内側の皮下に液を注入すると、プクッと丸く膨れ上がったものです。
 2日後に注射痕の赤味部分の大きさで、免疫ができているかどうかを判定するのです。赤味部分がなれけば、BCG接種となってしまうのです。

 その日は、朝から友達同士、注射痕を見せ合いながら、「○○ちゃんは、赤いから大丈夫」だとか、「○○ちゃん、全然見えないから、絶対にBCGだよ」などと言い合って、午後の測定の時間を待つのでした。
 チエちゃんの注射痕は、どうみても赤味があるようには見えません。針を刺した部分に血液の塊の痕がわずかに残るだけです。
お友達の前では平気な顔をしていましたが、これはもしかしたら、BCGとやらになってしまうかもしれないと、授業も上の空で過ごすのでした。実は、チエちゃんは一度もBCGをやった事がなく、噂では、かなり痛いということでした。

 いよいよ、午後になって、一列に整列し、保健室へと向かいます。
生まれ順に並んでいるので、チエちゃんの順番は後ろの方です。誰かが判定の後、別の場所へ連れて行かれました。ああ、スミ子ちゃんBCGだ、どうしよう! もう、ドキドキです。
前に立ったチエちゃんの腕をお医者さんは、グイッと引っ張りました。
小さな はさみ尺を当てています。

 10 かける 15

 セーフ!

 それにしても、赤い所なんて全然ないのに、お医者さんは目が悪いんじゃないだろうか? それとも、お医者さんだけに見分けられる赤味があるのだろうかと不思議に思ったものですが、とにかくBCGは免れたわけで、ホッと胸をなでおろすチエちゃんでした。

 この校医さんは、チエちゃんの盲腸の手術をしてくれた石崎医師ですが、後年、手が震える病気になっても校医を続けていたので、予防注射の時、あらぬ所に針を刺されるのではないかと不安になったものでした。

 また、あの頃は感染症などの知識はなく、一本の注射器で5~6人に注射をしていたように思います。知らないということは、恐ろしいことです。

第116話 いちじく

2007年10月02日 | チエちゃん
 チエちゃん家には、数種類の実のなる木がありました。
 裏山の畑には、桃(農協に出荷していた)、プラム、杏、 裏庭の池のそばにはグミ(後に、正式名「ゆすらうめ」と判明)、 村道を下りたサラシ川沿いの畑の一角には胡桃、 村道からチエちゃん家に登る門道(かどみち)には、渋柿の蜂屋柿、 土手には梅、甘柿、そして、イチジク。
 どれもこれも、季節感を運んで、家族を楽しませてくれたものでした。

 チエちゃんが、イチジクの漢字を知ったのは、何時のことだったでしょうか?

 無花果  と書いて、いちじく。

 花を付けないまま、いきなり実がなるのですから、なるほどと、ひどく感心したことを覚えています。
イチジクの実を割ると、中にはたくさんのおしべやめしべ状の突起があるので、実際にはこれが花であろうと気付くのですが、調べてみると確かに、イチジクは実ではなく、花托(かたく=花の咲くところ)が肥大したものとあります。

 あおかったイチジクの実がだんだん大きくなり、十分に赤紫色を帯びてきたので、そろそろ食べ頃だから、明日には収穫しようとおばあちゃんが提案します。
翌日、楽しみにしてイチジクの木に来てみれば、すでにカラスかヒヨドリかに突かれ、イチジクは無残な姿になっているのでした。
 鳥にしても、他の動物にしても、果実の最も熟れて美味しい時が人間より確実に分かるようで、このように先を越されることが度々あったように思います。
 そこで、少し熟し、まだ青い色を残しているうちに収穫し、砂糖で飴色に煮付けたイチジクをいただいたものです。これが美味で、おばあちゃんの好物のひとつでした。

 今日、食料品店でイチジクを見つけ、なつかしさに購入し食してみたのですが、あの頃のような甘さを感じませんでした。
子どもの頃に食べた味は、私の中で、より以上に甘く、おいしい記憶となっているようです。