昭和40年代のあの頃、年に2~3回は、学校で予防注射があったように覚えています。
特に、毎年必ず行なわれたのが、ツベルクリン反応注射とBCG接種です。
ツベルクリン反応注射というのは、結核菌感染による免疫ができているかを調べる検査ですが、俗に豆注射と呼ばれ、腕内側の皮下に液を注入すると、プクッと丸く膨れ上がったものです。
2日後に注射痕の赤味部分の大きさで、免疫ができているかどうかを判定するのです。赤味部分がなれけば、BCG接種となってしまうのです。
その日は、朝から友達同士、注射痕を見せ合いながら、「○○ちゃんは、赤いから大丈夫」だとか、「○○ちゃん、全然見えないから、絶対にBCGだよ」などと言い合って、午後の測定の時間を待つのでした。
チエちゃんの注射痕は、どうみても赤味があるようには見えません。針を刺した部分に血液の塊の痕がわずかに残るだけです。
お友達の前では平気な顔をしていましたが、これはもしかしたら、BCGとやらになってしまうかもしれないと、授業も上の空で過ごすのでした。実は、チエちゃんは一度もBCGをやった事がなく、噂では、かなり痛いということでした。
いよいよ、午後になって、一列に整列し、保健室へと向かいます。
生まれ順に並んでいるので、チエちゃんの順番は後ろの方です。誰かが判定の後、別の場所へ連れて行かれました。ああ、スミ子ちゃんBCGだ、どうしよう! もう、ドキドキです。
前に立ったチエちゃんの腕をお医者さんは、グイッと引っ張りました。
小さな はさみ尺を当てています。
10 かける 15
セーフ!
それにしても、赤い所なんて全然ないのに、お医者さんは目が悪いんじゃないだろうか? それとも、お医者さんだけに見分けられる赤味があるのだろうかと不思議に思ったものですが、とにかくBCGは免れたわけで、ホッと胸をなでおろすチエちゃんでした。
この校医さんは、
チエちゃんの盲腸の手術をしてくれた石崎医師ですが、後年、手が震える病気になっても校医を続けていたので、予防注射の時、あらぬ所に針を刺されるのではないかと不安になったものでした。
また、あの頃は感染症などの知識はなく、一本の注射器で5~6人に注射をしていたように思います。知らないということは、恐ろしいことです。