「死期が早まってるのかな・・・」
暗闇の中、隣の布団からヒロシの声がした。
ここ2カ月程、彼は背中が痛いと苦しんでいる。
肩甲骨の内側と外側が痛いらしい。
どうも透析日の前日がひどいようなので、やはり病気のせいなのだろう。
心臓か、あるいはまた何処か毛細血管がやられているのだろうと思うも、
そのことについて、私は口にしないことにしている。
どうしてこんな病気になっちまったんだろう・・・
若い頃の暴飲暴食が祟ったのかな?
いや、遺伝だな。親父も糖尿病だったもんな。
だとしたら、あきらめるしかないのかな・・・
クソッ、それにしてもこの痛みは、なんとかなんねえのかな。
俺が通院し始めてから、もう何人死んだかな。
鈴木さんだろ。安孫子さん。佐藤さん。もっといるな。
みんなつい昨日まで元気そうだったのに、来ないなと思ったら死んでた。
俺もそうなるのかな・・・
どんな思いが彼の頭の中を巡っているのだろう。
たとえ、夫婦であっても、頭の中まではのぞけない。
ただ、想像してみるだけだ。