チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第72話 田植え(その2)

2007年05月23日 | チエちゃん
 田んぼにはまった長靴を抜こうとして、足だけすっぽ抜けてしまったチエちゃんは、体中泥んこになることは免れましたが、片足は泥の中に着いてしまいました。
そこで、ズボンの裾を捲り上げ、裸足で田んぼに入りました。最初は冷っとしましたが、泥のぬるっとした感触が、泥んこ遊びを思い出させます。

 しばらくして、随分とがんばったと思い、振り返ってみれば、まだまだ列の半分しか進んでいないのでした。う~んと背伸びをした後、残り半分に挑戦です。

 そして、ようやく終わりになる頃、「いっぷくすっぺ!(休憩しよう)」の声がかかりました。
 田んぼから上がったチエちゃんは、何となく足がかゆい感じがしました。
よく見てみると、足に昆布の佃煮ようなものが付いています。

 うわ~ん、とって!とって!

 なんとそれは、ヒルでした。お父さんがヒルを取ってくれたあとからは、血が出ていました。

 蒸しパンとジュースでいっぷくしたあと、チエちゃんは蛭のおかげで田んぼに入る気が失せてしまいました。いいえ、それは言い訳で、実は田植えに飽きてしまったのです。
 それからは、おやつの前に手と足を洗った用水路で、弟たかひろ君と水遊びが始まりました。ドカンから流れ落ちる水に手を入れたり、葉っぱをちぎって流したり、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆくのでした。

 お弁当を食べた後、チエちゃんたちはおばあちゃんと一緒に家に帰ることになりました。
このようにして、チエちゃんの初めての田植えは終了したのです。

 そして、田植えの夕飯にはご馳走が並びます。
赤飯、お刺身、筍と身欠きにしんの煮物、天ぷらなど。
「結い」のお手伝いをしてくれた人へご馳走して、労をねぎらうのです。
大人達はビールやお酒を飲んでいます。お客さんがいるせいで、おじいちゃんも今日ばかりは陽気なお酒のようです。

 チエちゃんも、一人前にお手伝いをした気分で、ジュースを飲んだのでした。