チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第67話 みなみ山のばか婿

2007年05月08日 | チエちゃん
 むが~し、むが~し、みなみ山にばが婿がいだんだと。

 あるとき、山の向こうのとなりのに呼ばっち、出がけで行ったんだと。
そごの家でうま~いだんごをご馳走になったんだと。あんまりうまがったもんで、ほっぺた落ぢそうにになったんだどぉ。

「あ~、うまがった。うぢに帰ったら、おっかあに作ってもらうべ。」

そう思って、その名前を忘すんにように、帰り道は、だんご、だんご、だんごって言いながら帰ってきたんだどぉ。

 ところが、山道の途中に水たまりがあったんだと。
その水たまりを「どっこいしょ」っと、乗っ越えたとだんに、「だんご」っつう言葉を忘っちまったんだと。
ほんで、しかたねえがら、「どっこいしょ、どっこいしょ」って言いながら、うぢさ帰ったんだと。

「おっかあ。今帰ったぞ~。『どっこいしょ』っつうものをよばっち、ぽっぺた落ぢるぐらいうまがったがら、おめえも作ってくんにがあ。」って、言ったんだと。

「何、ばがなごど言ってんだあ。『どっこいしょ』なんていう食い物あるわげねえべ。」と、おっかあが言うもんだがら、喧嘩になっちまったんだと。

 ばが婿がおっかあをほうきでひっぱだいたら、おっかあのおでこに大きなたんこぶができたんだと。
おっかあは、たまげて
だんごのようなたんこぶがでぎだ。だんごのようなたんこぶがでぎだ。」と言ったもんだがら、

ばが婿はやっと思い出したんだと。

「おっか、おっかあ。そのだんご、だんごだあ。だんご、作ってくれろ!」

 今夜は、これでおしまいだぞ!

 お布団の中でチエちゃんは目をキラキラさせて、おばあちゃんからこんな昔話を聴いたのでした。

 ほんじゃ、きょうはおしまいない。