むが~し、むが~し、みなみ山にばが婿がいだんだと。
あるとき、山の向こうのとなりのに呼ばっち、出がけで行ったんだと。
そごの家でうま~いだんごをご馳走になったんだと。あんまりうまがったもんで、ほっぺた落ぢそうにになったんだどぉ。
「あ~、うまがった。うぢに帰ったら、おっかあに作ってもらうべ。」
そう思って、その名前を忘すんにように、帰り道は、だんご、だんご、だんごって言いながら帰ってきたんだどぉ。
ところが、山道の途中に水たまりがあったんだと。
その水たまりを「どっこいしょ」っと、乗っ越えたとだんに、「だんご」っつう言葉を忘っちまったんだと。
ほんで、しかたねえがら、「どっこいしょ、どっこいしょ」って言いながら、うぢさ帰ったんだと。
「おっかあ。今帰ったぞ~。『どっこいしょ』っつうものをよばっち、ぽっぺた落ぢるぐらいうまがったがら、おめえも作ってくんにがあ。」って、言ったんだと。
「何、ばがなごど言ってんだあ。『どっこいしょ』なんていう食い物あるわげねえべ。」と、おっかあが言うもんだがら、喧嘩になっちまったんだと。
ばが婿がおっかあをほうきでひっぱだいたら、おっかあのおでこに大きなたんこぶができたんだと。
おっかあは、たまげて
「だんごのようなたんこぶがでぎだ。だんごのようなたんこぶがでぎだ。」と言ったもんだがら、
ばが婿はやっと思い出したんだと。
「おっか、おっかあ。そのだんご、だんごだあ。だんご、作ってくれろ!」
今夜は、これでおしまいだぞ!
お布団の中でチエちゃんは目をキラキラさせて、おばあちゃんからこんな昔話を聴いたのでした。
ほんじゃ、きょうはおしまいない。