チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第7話 五右衛門風呂

2006年11月06日 | チエちゃん
 チエちゃん家のお風呂は、大盗賊 石川五右衛門が釜茹での刑になったことからその名が付いた、五右衛門風呂でした。

 鉄製のお釜状の湯舟で、底には板を丸く組み合わせた底板がはまっていました。
湯舟の周りはコンクリートで固め、タイル張りになっていました。
このお風呂は、戸外にある焚口から、薪を燃やして湯を沸かす仕組みになっています。
(「となりのトトロ」で、さつきちゃんとメイちゃんが入っていたのも、このお風呂だったような・・・)

 お風呂を焚きつける係は、ほとんど、おじいちゃんの仕事でした。
というのも、おじいちゃんはまだ明るいうちに、一番風呂に入り、ゆっくりと晩酌を楽しみ、ごはんを食べたいからでした。
寝る前に入った方が、身体がポカポカしてぐっすり眠れるのに、どうしてそんなに早くお風呂に入りたいのか、理解に苦しむチエちゃんでした。

 チエちゃんも、3年生ぐらいからお風呂の焚き方を教わり、たまにお手伝いをしました。
そんな時、チエちゃんの古くなったマンガ本が焚き付けの役に立つのでした。
薪が炎を出して燃えるのがおもしろくて、どんどん薪をくべてしまい、湯が熱くて、とても入れたものじゃなくなることもありました。

 このお風呂に、五月の節句には菖蒲を入れてキュッキュッと鳴らしたり、冬至にはゆずを入れて香りを楽しんだりしたものです。

 チエちゃんが大人になって、一人暮らしを始めたアパートのお風呂は、石油風呂でした。このお風呂のお湯は、なんだかピリピリして身体を刺すような感じがします。
お風呂なんてどれも同じと思っていたチエちゃんですが、
五右衛門風呂の薪で焚いたお湯のやわらかさ、身体を芯まで暖めてくれるやさしさが、妙に恋しく感じられるのでした。