元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「お父ちゃんの初七日」

2010-09-29 06:34:56 | 映画の感想(あ行)
 (原題:父後七日)アジアフォーカス福岡国際映画祭2010出品作品。前半は好調だが、中盤以降は腰砕けになる。惜しい出来だ。50代の若さで突然世を去った父親。台北でキャリアを積んだ娘(ワン・リーウェン)は、その知らせを聞いて急遽実家のある田舎町に出向く。ところがその地域の葬式の風習は実に面倒臭く、さらに式を取り仕切る道士のワンマンぶりにさんざん振り回される・・・・という話だ。

 慣れない事態に右往左往するヒロインの奮闘ぶりが笑いを呼ぶ。父親の棺の中に彼が生前“愛読”していたエロ本を入れるハメになるのをはじめ、名も知らない“親戚”が次々と現れたり、さらに一定の時間ごとに棺の前で泣かないといけない(食事中だろうと歯磨き中だろうとお構いなし)。



 道士のプロフィールもけっこう生臭く、女性遍歴(?)の末に一緒になった今の妻が、必要以上に“やり手”なのが笑わせる。花輪の代わりに炭酸飲料缶でタワーを作ったは良いが、折からの暑さで缶が破裂して大騒ぎになるというくだりもポイントが高い。

 しかし、後半になるとギャグのネタが枯渇したのか、普通のホームドラマになってしまうのが不満だ。それと同時に演出テンポが鈍くなってくる。

 この手の映画で思い出されるのは何と言っても伊丹十三の「お葬式」だが、あの映画の優れていた点は事前にネタをよく練っていたことだ。前半のドタバタ劇から終盤のしみじみとした人間ドラマへと着地させるまでに間延びさせないよう、あらゆる方面のモチーフをギッシリと詰め込んでいた。対してこの映画は工夫が足りない。

 葬儀が終わった後、ヒロインが今は亡き父親の存在感にあらためて想いを巡らすという“結び”にしたいのならば、そこに至るまでの前振りを積み上げるべきである。だが、父親が生前営んでいた屋台の運営方法(?)とか、オヤジギャグを連発して周囲の失笑を買っていた頃の話だとか、どうでもいいようなエピソードばかりが並んでおり、ラストに至る“助走”の部分が著しく欠けている。最後のヒロインのモノローグがまるで宙に浮いた感じになってしまうのも、むべなるかな。

 監督はワン・ユィリンとエッセイ・リウの共同だが、後半のまとまりのなさは、案外複数の者が演出を担当しているから・・・・なのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする