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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「コーチ・カーター」

2025-05-04 06:05:53 | 映画の感想(か行)
 (原題:COACH CARTER)2005年作品。高校バスケット部の新任コーチと生徒たちの奮闘を描く実録スポ根ものと見せかけて、実は“社会派”という、一筋縄ではいかない映画だ。アメリカ社会が抱える問題を、表向きはスポーツを題材にしつつ、巧みに織り込んでくる。このやり方は観ていて納得出来るものだ。もちろん、スポーツ映画としての体裁は整えられており、娯楽性も十分。観る価値十分の佳編である。

 バスケットボールの指導者として定評のあるケン・カーターが赴任してきたのは、LAの実力校だ。ところが、各種大会での実績とは裏腹に、この学校の風紀は底辺レベルにあった。何しろ、卒業後に大学に進む者よりも刑務所に入る奴の方がはるかに多いというシビアな状況だ。教育者の端くれとしては、生徒を“スポーツ馬鹿”にして将来の可能性を狭めるよりも、勉学をおろそかにせずに良い成績を収め、大学に進学させることが第一義的であるはずだ。そこでカーターは、生徒や保護者たちとクラブ活動と勉学の両立を約束させる。



 99年に実際に高校のバスケットボール・チームで起こった出来事を元にした実録物だ。当然のことながら、主人公の試みはなかなか上手くいかない。そもそも、学校当局や無理解な地域住民はスポーツを宣伝材料としか思っていないのだ。映画は、彼らと主人公とのヒリヒリするような葛藤を容赦なく描く。

 特に、成績が上向かない部員が少なからずいることを知ったカーターが、リーグ戦の途中であるにもかかわらず体育館を封鎖してしまうという、実力行使に走るあたりは見応えがある。さらには成績を上げるまで練習も試合も禁じてしまい、周囲は騒然となる。ドロップアウトして街のゴロツキどもと付き合うようになった生徒が、凄惨な事件を目の当たりにしてショックを受けてコーチのもとに舞い戻るシークエンスも、強い印象を残す。

 トーマス・カーターの演出は力強く、骨太なキャラクターの造形はもとより、肝心のバスケットのシーンもまったく手を抜いておらず、緊迫した試合での駆け引きは手に汗握るほどだ。主演のサミュエル・L・ジャクソンのパフォーマンスは万全で、アクションやサスペンス物以外では彼の代表作になるだろう。

 リック・ゴンザレスにロバート・リチャード、ロブ・ブラウン、アシャンティなどの若手をはじめ、チャニング・テイタムにオクタヴィア・スペンサーといったベテランまで上手く機能している。シャロン・メールのカメラによる深みのある映像、トレヴァー・ラビンの音楽も快調だ。とにかく、文武両道の教育の原点社会問題とからめて描ききった野心作で、存在価値は大いにある。

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