元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その20)。

2010-09-11 06:28:24 | 音楽ネタ
 最近、古いロックが聴きたくなり、何枚か買い求めている。その中で印象に残ったものを挙げてみたい。まず、イギリスのプログレッシヴ・ロック系のバンド“ルネッサンス”が73年に発表した「Ashes Are Burning 」(邦題は「燃ゆる灰」)。ルネッサンスは元を辿ればエリック・クラプトンら三大ギタリストが在籍した伝説のバンド“ヤードバーズ”に端を発するのだが、オリジナルメンバーでの活動には早々に終止符が打たれ、そのコンセプトを受け継いだ別のスタッフによって72年に再結成される。本作はその第二期ルネッサンスのセカンド・アルバムだ。

 プログレッシヴ・ロックとはいっても、ピンク・フロイドとかイエスみたいな高踏的で難解な部分は少しもない。オーケストラをフィーチャーしたクラシカルでソフトな展開を身上としている。このアルバムは全ての曲のクォリティが高い。どのナンバーも優雅で美しく、それでいてキャッチーだ。これらの楽曲を現時点でCMやドラマの主題歌などに使用すれば、問い合わせが殺到するかもしれない。



 ルネッサンスはアニー・ハズラムという女性ヴォーカルをフィーチャーしている。今でこそ女性ロッカーは数多くいるが、当時はハズラム以外にはアメリカのスージー・クアトロぐらいしか第一線で活躍している女流ロック系シンガーはいなかった。とはいってもハズラムの声はロックの激しさとは無縁の、クラシックの要素を取り入れたサウンドに合致した澄み渡るソプラノ・ヴォイスだ。こういう持ち味のあるロック系ヴォーカリストは今でもあまりおらず、リリースから40年近く経った現在聴いても新鮮だ。また、このディスクは録音が素晴らしく良い。その意味でも聴く価値がある。

 次に紹介したいのが、イギリスのロックシーンで特異な地位を占めていたバンド“ウィッシュボーン・アッシュ”の3枚目のアルバム「Argus」(邦題は「百眼の巨人アーガス」)。リリースは72年である。ウィッシュボーン・アッシュの一番の特徴は、4人のメンバーのうちリードギターを務める者が2人もいたことだ。つまりはツイン・リードで、通常のリードギター&リズムギターという編成とは明らかにハーモニーが違う。メロディを重層的に積み上げる必要があるため、極めてアンサンブルの密度が高い。また、それを可能にさせるメンバーのテクニックが確かだったことは言うまでもない。



 本作はLPレコードでのB面に当たる「キング・ウィル・カム」から「剣を棄てろ」までの展開が最高だ。トラディショナル・フォークの香りがする極めて美しい旋律と、強力なリズム感が圧倒的である。特にリードギター同士のリフが絡み合う部分など、鳥肌が立つほどだ。また、ジャケット・デザインと歌詞の内容から醸し出される典雅な世界は、もろにヒロイック・ファンタジー(笑)。録音も良好で、英国の深い森の中の空気が漂ってくるようである。

 アメリカのハードロックバンド“マウンテン”のベスト盤も買ってみた。最初の発売は73年で、邦題は「栄光のマウンテン」。マウンテンはクリームのプロデューサーとして知られるフェリックス・パパラルディが、ギタリストのレスリー・ウエストと共に69年に結成した4人編成のグループ。このディスクはバンドが解散する72年までに出されたアルバムからピックアップされている。なお、その後マウンテンは再結成され、現在も活動中だ。



 当時のハードロックの世界は完全にイギリス勢が優勢だった。米国ではマウンテンの他にはグランド・ファンク・レイルロード(GFR)ぐらいしか目立ったバンドはなく、アメリカ勢の巻き返しはエアロスミスなどが台頭する70年代後半を待たねばならない。マウンテンのサウンドはGFRのような泥臭さとは一線を画した、洗練されたメロディ・ラインと豪快なリズム展開を特徴とする。さらに伸びやかなスケール感もあり、今聴いてもまったく古くない。

 ラウドなロックといえば誰でもヘヴィ・メタルを思い浮かべるだろうが、マウンテンの楽曲はハードではあるが不必要にヘヴィではない。幅広い層に聴かせられる音楽であり、再評価されても良い素材だ。
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