元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「宣戦布告」

2010-09-05 06:47:00 | 映画の感想(さ行)
 2002年東映作品。麻生幾の同名小説の映画化で、朝鮮半島からのゲリラ部隊が潜入したことにより日本が戦争状態に突入するという筋書きを通し、日本の危機管理の欠陥を提示するセンセーショナルな作品。

 無名の監督と際物臭い雰囲気でさほど期待は持てなかったが、意外とマトモな出来だったのでホッとした。長大な原作を要領よくまとめ、演出テンポも妥当で、鼻白むイデオロギーの押しつけもなく、最後まで退屈することなく観ることが出来る。

 ただし、いかんせん予算不足だ。軍用ヘリのチャーターは無理だとしてもCG合成ぐらい使って欲しいし、議会や官邸でのシークエンスも人員が少なすぎる。原作ではイージス艦と工作船との交戦やP3C哨戒機と敵潜水艦の駆け引きまで描かれていたことを思うと物足りない。

 あと、石侍露堂は職人監督としてそれなりの腕を持っていると思うが、映画ならではのケレン味やキャラクター造形に関してはまだまだである。この点、原田眞人や押井守あたりの手練れが監督していたらどうだろうと思わずにはいられない(「独立愚連隊」みたいな型破りの面子を登場させてもよかった)。

 テーマの重大性に関しては公開当時からすでに多くの評論家から指摘されており、古谷一行扮する首相の“日本はいつからケンカもできない国に成り下がってしまったのか”というセリフがすべてを物語っている。終盤の、アッという間に軍事的緊張が東アジア全体を覆ってしまうくだりを観ると、国家的危機管理の重要さを痛感せずにはいられない。
コメント
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