元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「私の頭の中の消しゴム」

2006-01-14 09:15:57 | 映画の感想(わ行)
 韓国映画のダメさ加減を如実に示すシャシンである。題材は日本のドラマのパクリで主題歌もパクリ。恥ずかしくないのかと言いたいが、それでも前半はまあ良い。無骨で垢抜けないガテン系のニイちゃんと社長令嬢との出会いから結婚までを、なかなか微笑ましく描いている。

 だが、ヒロインが若年性アルツハイマー症になって云々という中盤以降の展開はまるで話にならない(まあ、そもそもこんな若くてこの病気にかかるのかどうかも不明だが ^^;)。主人公がボケボケ状態のカミさんを一人家に置いて仕事に出るという噴飯もののシークエンスや、何の解決にもなっていないラストなどを見ても分かるとおり、作者はアルツハイマー症をシビアな素材だと思っておらず、単なる“泣かせのネタ”にしか考えていないのだ。

 それも当然で、障害者に対してとことん冷たい韓国社会においては、身体的ハンディを負った者が“真面目に描く対象”であってはならないのだろう。そんな浅はかなスタンスでは、いくら娯楽映画といえども感動を観る者に与えることは出来ない。

 主演のチョン・ウソンは好演でルックスも良いのだが、この“作劇はいい加減で、あとはキャストの存在感に丸投げ”という図式がまかり通ることこそ、韓国映画の後進性であると思うし、この程度のシャシンに喜んでいる日本人も多いことは、我が国の観客のレベルが落ちているとしか言いようがない。

 なお、相手役のソン・イェジンは見かけは小綺麗だが印象は実に薄っぺら。他の一線級韓国女優と比べると随分と見劣りがする。
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荻原浩「コールドゲーム」

2006-01-14 09:13:12 | 読書感想文
 中学時代の“いじめられっ子”から残虐な“復讐”を仕掛けられ、右往左往する高校生達のひと夏を描くサスペンス編。

 とにかく、主人公らに以前自分がイジメに荷担していたことに対する反省の色が全くないことに面食らった。ただしこれは“主人公達を悪人に描いている”ということではない。皆スポーツや趣味に打ち込むフツーの高校生であり、中には不良もいるが、そいつと主人公は親友だったりする。そして事件が終わった後、彼らは“成長”さえしてしまうのだ(爆)。

 たぶん作者のスタンスは“イジメはあって当然。イジメられる方が悪い”そして“イジメる側こそ正常。イジメられるのは、どっかオカシイ”というものだろう。この考え方自体はまことに不快だが、現実にはその通りだったりする場合が多々あるのだからイヤになる。

 本当の“犠牲者”である“いじめられっ子”とその家族を含めて、感情移入できるキャラクターは皆無。従ってカタルシスも何もなく、娯楽小説としては失格なのだが、それ以前に作者の露悪的な姿勢が見透かされて閉口する。読む必要のない本だ。
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