97年製作。惰性で仕事をしている郵便配達夫・沢木(堤真一)がヤクザをやっている旧友の野口(堀部圭亮)に郵便物を届けに行くと、ちょうど野口は小指をツメている最中だった。ひと騒ぎあった後、知らない間にツメた小指と覚醒剤の包みが沢木のカバンの中に。その夜、配達できなかった郵便物をヤケになって自宅で開封していく沢木は、末期癌を患う娘が恩人に宛てた手紙を見つける。差出人は“12号室、小夜子”とあるだけ。気になった沢木は、翌日無断欠勤して近くの病院を捜しまわる。やっと見つけたその娘(遠山景織子)に一目惚れしたものの、同じ病院に入院していた殺し屋のジョー(大杉蓮)と知り合ったおかげで、いつの間にか警察に凶悪犯罪者として指名手配されてしまうのであった。俳優出身のサブ監督(本名:田中博行)によるアクション・コメディだ。
これは面白い。輪郭は“平凡な主人公が偶然が重なりトラブルに巻き込まれていく”という喜劇のルーティンなのだが、脚本のツカみの上手さと、止まることを知らない疾走感と、キャラクター設定の見事さにより、2時間近くをアッという間に見せてしまう。
主人公が劇中ほとんど自転車に乗っているという設定は出色で、これだけで演出のテンポを小気味良いものにする。話が進むにつれ自転車のスピードは速くなり、ラスト近くには沢木と野口、そしてジョーの3人による“激走”で映画のヴォルテージは最高潮に達する。

ギャグの扱い方も見事だ。前半の悪趣味すれすれのブラックな笑いをテンポの良さでクリアしたかと思うと、ジョーの回想シーン(殺し屋選手権の思い出)ではパロディ満載で爆笑させ、比較的静かな場面では森田芳光ばりのオフビートな笑いが冴え、クライマックスではハリウッド作品もかくやと思わせるスラップスティック活劇が全面展開する。
バラバラのエピソードが最後にピシッとはまる展開や、無駄なキャラクターを一人も出さない思い切りの良さには脱帽するばかり。「バニシング・ポイント」を連想させるラストも切なさがあふれて素晴らしい。
正直言って、これ以外のサブ監督の映画は観る価値はないが(笑)、この作品に限ってはオススメである。
これは面白い。輪郭は“平凡な主人公が偶然が重なりトラブルに巻き込まれていく”という喜劇のルーティンなのだが、脚本のツカみの上手さと、止まることを知らない疾走感と、キャラクター設定の見事さにより、2時間近くをアッという間に見せてしまう。
主人公が劇中ほとんど自転車に乗っているという設定は出色で、これだけで演出のテンポを小気味良いものにする。話が進むにつれ自転車のスピードは速くなり、ラスト近くには沢木と野口、そしてジョーの3人による“激走”で映画のヴォルテージは最高潮に達する。


ギャグの扱い方も見事だ。前半の悪趣味すれすれのブラックな笑いをテンポの良さでクリアしたかと思うと、ジョーの回想シーン(殺し屋選手権の思い出)ではパロディ満載で爆笑させ、比較的静かな場面では森田芳光ばりのオフビートな笑いが冴え、クライマックスではハリウッド作品もかくやと思わせるスラップスティック活劇が全面展開する。
バラバラのエピソードが最後にピシッとはまる展開や、無駄なキャラクターを一人も出さない思い切りの良さには脱帽するばかり。「バニシング・ポイント」を連想させるラストも切なさがあふれて素晴らしい。
正直言って、これ以外のサブ監督の映画は観る価値はないが(笑)、この作品に限ってはオススメである。

