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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「TAKESHIS’」

2006-01-12 06:57:15 | 映画の感想(英数)
 北野武もフェリーニの「8 1/2」みたいな作品を撮れるほど“大物”になったのかと一瞬思ったが、要するに「みんな~やってるか!」のシリアス版(?)であり、当人が遊んでいるだけだと思う。

 こういうのを前にして“ワケ分からん、難解だ”と首をひねるのも野暮というもの(それは作者を喜ばせるだけ)。単に“見た目が面白いかどうか”で評価すべきシロモノだ。

 で、その意味では大したシャシンではない。少なくとも、劇場でカネ取って見せるもんじゃないだろう。最初から終わりまでセルフ・パロディ。過去にやったネタの焼き直しだ。しかも上映時間が無意味に長い。別にそれが悪いというわけではないが、何の工夫もなくダラダラと流しているだけなので、始まって10分で飽きた。

 カット割りや各シークエンスの繋ぎにリズム感を持たせるとか、過去のネタを別の俳優にやらせて観客の意表を突くとか、もっと芸を見せるべきだった。


 唯一面白かったのが京野ことみの怪演。清純派だけどイマイチ印象の薄かった彼女が、ここでは一転、頭のイカレた女を演じる(しかも、ヌードと濡れ場付き ^^;)。まあ“女優開眼”ってことで今後の活躍に期待しよう(笑)。
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小川洋子「博士の愛した数式」

2006-01-12 06:54:00 | 読書感想文
 この「博士」と呼ばれる老数学者は、新たな記憶が80分しか保たないという設定・・・・とくればクリストファー・ノーラン監督の「メメント」を思い出すが、本作はああいう殺伐とした話ではない(笑)。

 この風変わりな人物の家政婦として雇われた「私」とその息子、決して幸せな人生を歩んでいるとは言えない3人が、互いの心の隙間を埋め合う絶妙のトライアングルを形成する、そのキャラクター設定の上手さに舌を巻いた。そして作劇面でも見事なトライアングルが存在する。その「一辺」は3人の内面描写、次の「一辺」は博士が披露する数学理論の奥深さ、それと博士の阪神タイガースに対する熱い想いが残りの「一辺」である。

 ハッキリ言って、人物模様と数学ネタだけでは“ちょっと奇をてらった軽い読み物”に終わっていた可能性が高い。ましてや私のように数学に関しては中学生の時分から完全に落ちこぼれていた身としては(爆)、いくら“素数は美しい”だの“友愛数がどうした”だのと言われてもまるでピンと来なかったろう。ここにタイガースという、いわば“下世話なネタ”を織り込むことにより、物語の好感度がグンと増したと言ってよい(これがジャイアンツやライオンズではダメだったろう。まさしくタイガースでなければならない ^^;)。

 小川洋子の小説は初めて読んだが、とても雰囲気が柔らかく、文章が優しい。他の作品もチェックしてみたくなった。
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