元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い」

2006-01-24 06:53:11 | 映画の感想(は行)
 (原題:Four brothers)デトロイトを舞台に、義理の母親を殺された“義兄弟四人衆”が町のボス相手に大暴れするという活劇編。

 ジョン・ウェイン主演の西部劇「エルダー兄弟」を元にしているとかで、なるほど“警察はアテにならない。俺が掟だ”的なノリが全編を覆っている。西部劇の時代ならともかく、現代でこれをやれば主人公達は復讐を遂げる前に確実に刑務所行きだが、そのへんを“愛嬌”だと割り切れば無理なプロットにも腹は立たないだろう。

 アクションは大味ながら、クライマックスが銃撃戦ではなく殴り合いだというのが微笑ましい。主演のマーク・ウォールバーグも楽しそうに演じている。

 ただ、どう見ても“お気楽B級活劇”でしかない本作を褒め上げている評論家が複数いるのには苦笑する。テレビの洋画劇場で放映するのならともかく、劇場でカネを払って観る価値があるシャシンとは思えない。もうちょっと観客の立場での論評をお願いしたいものだ。

 なお、監督はジョン・シングルトンだが、デビュー作「ボーイズ’ン・ザ・フッド」で切れ味鋭いところを見せたこの演出家も、近年すっかりお手軽監督に落ち着いたようで、少し寂しいものがある(笑)。
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「団地妻 昼下がりの情事」

2006-01-24 06:49:10 | 映画の感想(た行)
 71年製作の記念すべき“日活ロマンポルノ”の第一作。もちろんリアルタイムで観られるわけはなく(笑)、私が接したのは某映画祭においてである。

 夫との性生活に満たされない団地の主婦(白川和子)が、夫の友人との浮気場面を知人に目撃されたことがきっかけとなり、コールガール組織に引きずり込まれて破滅するまでを描く。監督はロマンポルノ最多登板回数を誇る西村昭五郎。

 とにかく上映中、場内は爆笑の渦だった(おいおい ^^;)。平凡な団地妻の性生活をのぞき見るという、当時としてはラディカルなエロティシズムに満ちていたであろうこの作品は、今観るとコメディにしかならないのが悲しいやらおかしいやら・・・・。

 売春組織の元締めである近所の主婦(南条マキ)はまだしも、お向かいに住む奥さん(美田陽子)までもがミョーに化粧が濃い。電動コケシを使って悶える場面の珍妙さにみんな含み笑い。さらに、昨今のAVと比べると“単なるソフト・コア映像”にすぎないポーズだけのシーンに、ヒロインの“最初は嫌がっていた私でしたが、あらゆる男に抱かれているうちに、次第に大胆になっていくのをどうすることもできませんでした”などというワザとらしいモノローグが重なるくだりは、もう涙が出るほど笑ったね。

 取ってつけたような暗転ラストに失笑したが、観終わって少なくとも観客を退屈させないパワーには溢れていたことに気付くのである。スタッフは皆若く、ポルノの何たるかを知らないまま、がむしゃらにフィルムを回し続けた心意気は買いたい。

 ロマンポルノはその後17年間続き、若い監督たちも場数を踏んで一人前になり(西村監督も後年には腕のいい職人監督になったようにね)、日本映画の底辺を支えていたことは事実なのだ。

 実はこの映画はシネマスコープのワイド画面で撮られている。ビスタサイズの映写装置しか持たない現在の多くの邦画専門館では上映できず、それがこの時期のこういった作品がジャンク処分される理由の一つなのだが、ポルノといってもれっきとした映画であり“文化財”でもあるし、大切に保存してほしいと思うのは私だけではなかろう。
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