7歳の姉ヘイフラワーと幼い妹キルトシューを主人公にしたフィンランドの児童文学シリーズ「Heinahattu ja Vilttitossu 」の映画化。題材としてはスウェーデン映画の「ロッタちゃん はじめてのおつかい」を思い起こさせるが、大人達の仰々しい仕草やマンガチックな大道具・小道具が満載であることを見ても分かるとおり、これは現実感が希薄な子供向けのファンタジーとして作られている。
ただ、大人は観る価値は全然ないかというと、そうでもない。それは、妙に生々しい両親の扱いだ。
仕事に没頭して家庭を顧みない父親と、家事を放棄して仕事に出ることだけを考えている母親。ヘイフラワーがすべての家事と妹の世話を引き受けていなければ家庭崩壊だろう。
物語はヘイフラワーが小学校に上がり誰も家事を担当する者がいなくなるかもしれないという設定で進むが、身勝手な両親をマンガ風に描こうとするほど現実に近くなるというジレンマは悩ましい。昨今そんなマンガみたいな“考えの浅い親”が増えてきたからだろうか、ヘイフラワーがキレて“反乱”を起こすのも当然だ。
幸い、物分かりの良い隣人と親切なお巡りさんに助けられて事なきを得るが、現実世界ならばまさしく児童虐待事件である。
目の覚めるようなカラフルで美しい画面、そして子供向けファッション雑誌から抜け出したみたいな主人公達の衣装は見ているだけで楽しい。それだけに、家庭環境をめぐる微妙な屈託が気になってしまった。