フィルターをかけまくった荒い画面と過剰なカッティング。トニー・スコット監督らしいケレン味たっぷりの映像処理だが、これを全編やられると疲れる。しかも、見た目こそハッタリかましているが、話自体はちっとも面白くない・・・・というか、分かりづらい。しかもクライマックスは「トゥルー・ロマンス」の二次使用。
名優ローレンス・ハーヴェイの娘で何不自由ない生活を送っていた主人公が、どうしてバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)の世界に足を踏み入れたのか、観客が知りたいのはそこなのに、本作では伝記映画としての形態は横に追いやられ、単なる低調な犯罪ドラマに終わっている。
製作コンセプトが煮詰められていない上に、脚本が手抜き。これじゃダメだろう。
だが、キャスティングは濃い。配役に限って言えば「シン・シティ」以上だ。ヒロインの母親がジャクリーン・ビセットだなんて、それだけでもたまらないが、ミッキー・ロークやクリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツにミーナ・シュバリ、さらに「ビバリーヒルズ青春白書」シリーズのブライアン・オースティン・グリーンとアイアン・ジーリングが本人役で出ているばかりか、先頃急逝したドミノ・ハーヴェイ本人も顔を見せるのだからスゴい。
で、そんな連中の真ん中で主役を張るキーラ・ナイトレイだが、いくら何でも若すぎて可愛すぎ(笑)。ただし殺伐とした作劇にあっても少しも下品になっていないのは、彼女の持つノーブルな雰囲気ゆえだろう。
結論としては過度に多彩な出演者陣を楽しむだけの映画で、娯楽映画としては及第点に達していないということだ。