元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シン・シティ」

2006-01-05 19:33:24 | 映画の感想(さ行)

 デビュー作の「エル・マリアッチ」から十余年、ようやくロバート・ロドリゲス監督のメジャー資本での代表作が完成したという感じだ。

 本来“映像派”である彼は、有名俳優が顔を揃えるためにストーリー性を強調せざるを得ない一般娯楽映画には合っておらず、「デスペラード」以降ずっと不本意な仕事しかできなかったのも仕方がないと思う。だが、本作はキャストこそ豪華であるが中身は「デアデビル」や「エレクトラ」などの原案などで知られる共同監督フランク・ミラーのブッ飛んだ原作コミックの映画化であり、雰囲気はもろマイナー調だ。

 3つのストーリーからなるオムニバス編だが、それぞれが交差するようであまりしておらず、独立した3つの短編として機能している。しかもリアリティはゼロに近く、ただ描かれるのは各エピソードにおける“主人公のハードボイルドぶり”だけ。こういうネタこそ彼にふさわしい。

 意味もなく残虐シーンのオンパレードながら、モノクロ画面と思い切った構図、そしてテンポの良すぎる展開により巧みに中和されている。

 キャスト面では不死身のタフガイを演じるミッキー・ロークが最高。メイクが凝りすぎてちょっと見ただけでは彼とは分からないが、文句なしの怪演である。あと、女殺し屋のデヴォン青木なども面白いが、「パラサイト」でもロドリゲスと組んだイライジャ・ウッドが無茶苦茶な役で出ているのも見ものである。

 なお、一場面だけQ・タランティーノが監督しているが、これもシュール極まりなく、強い印象を残す。とにかく、フツーの映画では飽き足らないコアなファン必見の作品だ。間違ってもデートで観てはいけない(笑)。
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「容疑者 室井慎次」

2006-01-05 19:17:25 | 映画の感想(や行)
 同じく「踊る大捜査線」からのスピンオフ作品である「交渉人 真下正義」が楽しめたので本作も期待していたが、まるでダメである。


 だいたいストーリー自体がまったく面白くない。室井管理官が逮捕されるきっかけになった捜査中の容疑者の死亡事故からして“有り得ない”ケースだし、それをネタに告訴に踏み切る弁護士の態度も理解不能、さらに“事件の真相”とやらも腹の立つほど低レベル。

 ここで“事件そのものは単純でかまわない。映画の焦点は主人公を取り巻く人間模様の方なのだ”という意見もあるだろうが、これでは手抜きかギャグとしか思えず、出るのは失笑ばかりである。

 監督がいつもの本広克行ではなく、当シリーズの脚本担当で演出は素人の君塚良一がメガホンを取っているせいか、気取った演劇的ケレンが全編を覆っているのも好きになれない(それを代表しているのが弁護士に扮する八嶋智人のオーバーアクト)。それらと“本来的に大根”である主役の柳葉敏郎のパフォーマンスとが映画の中でずっと平行線を辿っており、作劇のバランスが極めて悪い。

 現場のマジメな警察官と保身や権力闘争にしか興味のない上層部という単純すぎる構図も何やらサヨク的な臭いがして不快だ。

 唯一の救いは主人公をサポートする新人弁護士役の田中麗奈で、体育会系の真っ直ぐなキャラクターが作者の気負いすぎた不遜な“下心”を易々と乗り越えてゆく痛快さがある。次回は彼女を主人公にした“番外編”を望みたい。
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