元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「NANA」

2006-01-17 19:10:46 | 映画の感想(英数)
 ワザとらしい設定に自己陶酔的なクサいセリフ、超御都合主義な筋書きetc.いわゆる“少女マンガ的なもの”が虫酸が走るほど嫌いな私にとっては、この映画の鑑賞は苦痛でしかなかった。

 それ以前に「avecmon mari アベック モン マリ」や「とらばいゆ」の大谷健太郎監督としては、随分と場違いな題材である。ロックバンドの女性ヴォーカリストと高校時代の恋人を追って上京してきた女のダブル・ヒロインということで、いつもの大谷監督ならそれぞれの恋愛相手も加わった四角関係の微妙な屈託をウィットに富んだセリフと共に面白おかしく淡々と描くところだが、本作は矢沢あいの同名コミックを“出来る限り忠実に”実写化することだけを目的に作られているせいか(私は原作は未読だが、そうらしい)、各キャラクターが極端に図式的かつ一面的に設定されており、これでは監督も得意の“腹芸(?)”を見せる余地がない。プロデューサー側が何を狙って大谷を起用したのか、まったくもって謎である。

 それでも、コンサートの場面が優れていれば目をつぶる気にもなろう。だが、これもダメ。ロックの何たるかが全然分かっていない。

 中島美嘉は本職だから演出がまずくても一応絵にはなるが、松田龍平が所属するバンドは最低。あれは断じてロックではなく、ただのアイドル歌謡だ。こんなイモバンドにホイホイと参加してしまう軟弱野郎を忘れられない女性ロッカーって、いったい何なのかと思ってしまう(笑)。

 演技陣はおおむね低調ながら、唯一“ハチ”役の宮崎あおいだけは目立っていた。あんな、さとう珠緒の出来損ないみたいな鬱陶しい女を生々しく演じられるのは、彼女の実力ゆえだろう。

 なお、興行的には好調とかで同じスタッフで続編も作られるらしいが、私は観るのを遠慮したい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「この胸いっぱいの愛を」

2006-01-17 06:51:48 | 映画の感想(か行)
 梶尾真治の「クロノス・ジョウンターの伝説」を塩田明彦監督が映画化。たぶん製作側は“「黄泉がえり」の二匹目のドジョウ”を狙ったのだろうが、明らかに撮る方は気が乗っていない。

 何よりもこの腑抜けた脚本。東京から北九州市に向かった旅客機の乗客のうち主人公をはじめ4人が20年前にタイムスリップするという設定だが、いったい他の乗客はどうなったのか。

 ひょっとして“この4人はたまたま20年前にやり残したことがあったので、そうなったのだ。あとの乗客は別の時間軸に飛ばされている”ということかもしれないが、ならば主人公の行動はタイム・パラドックスを生み、そもそも彼が飛行機に乗るという物語の出発点から怪しくなってくるではないか。

 主人公と少年時代に好きだった年上の女性(元音大生)との関係を描くパートも実につまらない。レベルとしては韓流ドラマとほとんど同じ。特に終盤、主人公がオーケストラ関係者に頼み込んで・・・・というくだりは、あまりの御都合主義に泣けてきた。

 キャストも弱体の極みで、伊藤英明もミムラも勝地涼もTVドラマ並みの気合いの入らない演技だ。良かったのはわずかに倍賞千恵子と中村勘三郎のベテラン陣のみ。

 舞台が北九州市門司なのにまったく方言が出て来ないのも不満。これは駄作だ。塩田監督も“小遣い稼ぎ”の感覚で仕事を引き受けたとしか思えない。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする