ポストの影あはく伸びたるコンビニまへ春の愁ひが溜まりてゐたり
過ぎてゆく時間のなかの昼食に黄身もりあがる玉子かけごはん
泪夫藍色の雲浮くひぐれ冬大根ほのあかりしてキッチンの隅
オーデコロンの旧き香よどむごとくにて執念き暑さはてなく続く
ぽつんぽつん灯の点る廓しんとして過去世のやうに靴音ひびく
鶯のこゑのみきこゆる午の坂ありてあらざるわたくし歩む
内臓を消して風吹く街をゆくジャコメッティの針金の人
銀色のゼムクリップ古き椅子のうへこの世の大事の外の春昼
少女ふたり乗りきてはじける声に笑ふさながら杳きわれか 元気で
あるときは石は祈りてをるならむよわきひかりの差す道の端
(小島熱子 ポストの影 砂子屋書房)
過ぎてゆく時間のなかの昼食に黄身もりあがる玉子かけごはん
泪夫藍色の雲浮くひぐれ冬大根ほのあかりしてキッチンの隅
オーデコロンの旧き香よどむごとくにて執念き暑さはてなく続く
ぽつんぽつん灯の点る廓しんとして過去世のやうに靴音ひびく
鶯のこゑのみきこゆる午の坂ありてあらざるわたくし歩む
内臓を消して風吹く街をゆくジャコメッティの針金の人
銀色のゼムクリップ古き椅子のうへこの世の大事の外の春昼
少女ふたり乗りきてはじける声に笑ふさながら杳きわれか 元気で
あるときは石は祈りてをるならむよわきひかりの差す道の端
(小島熱子 ポストの影 砂子屋書房)