まん丸な地球に裏と表なく用なき人はこの世におらず
平凡で小さきものよ幸福は千鳥饅頭ちどりが一羽
釘箱に林檎箱より抜きし釘亡き父しまいき曲がれるままに
折紙の兜で節句飾ろうか息子は母に似るろくでなし
黒失くし白を貰いて白失くし黒を拾いてさす黒日傘
死んだふりしているような顔覗く棺に白菊納めんとして
しろたえのごはんに落とす生卵混ぜてたちまち黄金(こがね)の御飯
ままごとのようだね夕餉紙の皿紙に器を畳に広ぐ
目白来る窓の辺に寄り電卓を叩けり春の事務服を着て
祖父吸いし莨にその名覚えたる桔梗が咲けりさみしき色に
(上野晴子 雲の行方 六花書林)
平凡で小さきものよ幸福は千鳥饅頭ちどりが一羽
釘箱に林檎箱より抜きし釘亡き父しまいき曲がれるままに
折紙の兜で節句飾ろうか息子は母に似るろくでなし
黒失くし白を貰いて白失くし黒を拾いてさす黒日傘
死んだふりしているような顔覗く棺に白菊納めんとして
しろたえのごはんに落とす生卵混ぜてたちまち黄金(こがね)の御飯
ままごとのようだね夕餉紙の皿紙に器を畳に広ぐ
目白来る窓の辺に寄り電卓を叩けり春の事務服を着て
祖父吸いし莨にその名覚えたる桔梗が咲けりさみしき色に
(上野晴子 雲の行方 六花書林)