春灯の下に解きゆく母の絹美醜まざまざ見せて逝きたり
曖昧に省き来たりし助詞ひとつ厨に飛ばし玉葱きざむ
余韻曳きて走る車中に眼(まなこ)閉ぢ今日の桜は一樹に足らふ
藍染めの小さき袋購ひぬ入れてもみむか吾がはかなごと
ひとり行くは孤独にあらず穂すすきの落暉に染まる湖までの道
屈まりて水琴窟の音聞ける人は自づと素顔見せたる
蒼空に白旗のごとはためかす施設に持ちゆくタオル幾枚
ざつくりと切る大根のみづみづと窓に雪降る劫初のごとく
これとこれ切りて繋がむボードには吾の臓器の右に左に
濁点を付け忘れたる文送り夜にしたたらす目薬一滴
(渡辺茂子 湖と青花 不識書院)
曖昧に省き来たりし助詞ひとつ厨に飛ばし玉葱きざむ
余韻曳きて走る車中に眼(まなこ)閉ぢ今日の桜は一樹に足らふ
藍染めの小さき袋購ひぬ入れてもみむか吾がはかなごと
ひとり行くは孤独にあらず穂すすきの落暉に染まる湖までの道
屈まりて水琴窟の音聞ける人は自づと素顔見せたる
蒼空に白旗のごとはためかす施設に持ちゆくタオル幾枚
ざつくりと切る大根のみづみづと窓に雪降る劫初のごとく
これとこれ切りて繋がむボードには吾の臓器の右に左に
濁点を付け忘れたる文送り夜にしたたらす目薬一滴
(渡辺茂子 湖と青花 不識書院)