気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

湖と青花 渡辺茂子 不識書院

2019-09-22 00:39:52 | つれづれ
春灯の下に解きゆく母の絹美醜まざまざ見せて逝きたり

曖昧に省き来たりし助詞ひとつ厨に飛ばし玉葱きざむ

余韻曳きて走る車中に眼(まなこ)閉ぢ今日の桜は一樹に足らふ

藍染めの小さき袋購ひぬ入れてもみむか吾がはかなごと

ひとり行くは孤独にあらず穂すすきの落暉に染まる湖までの道

屈まりて水琴窟の音聞ける人は自づと素顔見せたる

蒼空に白旗のごとはためかす施設に持ちゆくタオル幾枚

ざつくりと切る大根のみづみづと窓に雪降る劫初のごとく

これとこれ切りて繋がむボードには吾の臓器の右に左に

濁点を付け忘れたる文送り夜にしたたらす目薬一滴

(渡辺茂子 湖と青花 不識書院)

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