気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

パンの耳⑤ つづきのつづき

2022-01-29 13:18:37 | つれづれ
親ガチャって嫌なことばだ 木造の長屋に群れて彼岸花咲く
にんげんの身体から出る白いもの女も男もひとはさびしい
(松村正直 ひがんばな)

昭和の臭いのする一連。わたしの好きな映画「異人たちとの夏」で、主人公が亡くなった両親、それも若い頃の両親とすき焼きを食べるシーンがあるが、あの感覚を思った。


立ち止まる人もなくなり葉桜にほっとしているわたし、桜も
遠くから眺めるだけの林檎飴てらてら赤きを母は疎みき
(佐々木佳容子 綿菓子)

モノを中心に構成した連作。桜、縁日のようなにぎやかさから距離を置きたい心待ちが伝わる。


「箱入りのままだあなたは」夕闇の駅に言われた ぐわんと揺れた
じっとりと首つたう汗、人形の私が硝子の扉を閉める
(甲斐直子 リヤドロ)

ゴージャスな謎を感じる。自らを人形に託した心情に不安がよぎる。


漠然とただ明日在るを信じつつ机上に夜更け眼鏡をはずす
灰色の雲間を光り夕日落つおのづから掌と掌合はせてをりぬ
(森田悦子 「では また」)

老いの深まりを感じつつ、一日一日を丁寧に生き、丁寧に詠むことを教えられる一連。
破綻がない。

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