気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

反射率7%  向山文昭 

2009-03-17 19:35:16 | つれづれ
野宿せし人もベンチの勤め人も眠らせている朝の公園

開く傘閉じる傘とが交じりゆく汽水のような地下との境

ロックした部屋の中へと落としやる鍵が微かな響きを返す

何をしていたか言わない自転車が満月の下を帰って来たり

電池切れてその存在を示しくる電池いくつも家に潜めり

事故の死を報じておりし映像を見終えて普通の死に呼ばれ行く

持ち主の逝きたる後も余命持つ電動車イスは引き取られたり

グーグルの衛星画像草を刈るわれの姿も捕えているか

戦死者の書きし原稿用紙なり枠のかたちは現在(いま)と変わらず

(向山文昭 反射率7% 本阿弥書店)

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奥村メール歌会でご一緒していて塔所属の向山文昭さんの第一歌集をよむ。
最初の三首は、歌壇賞候補作となった連作「朝の公園」から。仕事の都合で東京へ単身赴任しておられたときのことを纏めた作品。
作者は精密機械メーカーのエンジニアで、特許関係の仕事をされていたらしい。
現実をしっかり踏まえて、モノをよく見て詠んでいると思う。
電池切れて・・の歌、電動車イスの歌など、ほんとにそうだなあと共感する。気づきがうまく一首のなかに収まっている。
草刈りをしながら、グーグルの画像に取られていないかと思う気持ち。思わずクスっと笑ってしまう。
死は日常にあることだが、隠されていて、それが思わぬ形で現れたとき、的を射た歌ができるのだと思った。

たはむれにGoogleEarthで覗きたりわが子働く千葉市美浜区
(近藤かすみ)


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