気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

覚えてゐるか 中地俊夫

2011-11-18 23:58:41 | つれづれ
みんなみんな死ぬんだ死ぬんだ 円覚寺の僧がたたける木魚のおと

ヤクルトでーすといふ声がしてヤクルトを買はされてしまふ小父さんわれは

思はずも小池光と握手せり 日台歌会圓満成功

曽我ひとみさんが歩いてゐるだけでもう充分な佐渡の秋なり

ハーフはどこか違ふわねーといふ声をよろこばんとすかなしまんとす

パパママに言ふんぢやないぞと囁きてゴマ入り生姜糖をなめさす

わが家のファックスを動かしはじめたる午前三時の蒔田さくら子

朱(あか)き実を川に流しつづけたことぢいぢが死んでも覚えてゐるか

斎藤茂吉の血液型を問ひたれば秋葉四郎が即座に答ふ

トンカツの代金払つて外に出て満月だよと言ひに戻りぬ

(中地俊夫 覚えてゐるか 角川書店)

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短歌人発行人の中地俊夫、第三歌集『覚えてゐるか』を読む。
この歌集の柱になっているのは、ハーフ(今はダブルということが多いらしい)のお孫さんの歌と、短歌人はじめ歌壇の人々の歌。
日台歌会は、2004年に台湾であった短歌人夏季集会のこと。私も参加した。帰りの飛行機が異常に揺れたので怖くて怖くて忘れられない。死ぬかと思った。着陸したときは、ほっとして拍手が起こった。あと、曽我ひとみさんの歌など時事詠(じじえい)も心に残る。思えば、ぢぢ詠、じじ詠の歌集である。
ヤクルトの歌、トンカツの歌など、中地さんのお人柄の温かさを改めて感じた。

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