気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-11-21 20:14:05 | 朝日歌壇
黄葉の橅の林に日の差せり瘤のある木と洞のある木と
(熊谷市 内野修)

子持鮎食めばひちひち呟けり光を知らぬ千の粒粒
(岐阜市 棚橋久子)

風船を空へ空へと押し上げる運動会の子らのてのひら
(高槻市 有田里絵)

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一首目。選者の永田和宏さんもおっしゃっているが、下句がいい。瘤と洞は、いろいろなことを暗示しているように読める。積極性と消極性、躁と鬱、男と女、などなど。季節が秋から冬になるように、人生の後半になると人格が丸くなると昔から言われて来たが、果たしてそうだろうか。むしろ瘤と洞は、ますます顕著になるように思う。自然を詠いながら、深く読ませられる一首だ。
二首目。まずオノマトペの「ひちひち」が良い。こんなオノマトペを聞いたことがない。そう言われれば、鮎などの魚の卵を食べたときはこんな感じだ。子持鮎の卵の粒粒は一度も光に当たることなく、人のお腹に収まってしまう。しかし、「呟けり」で光にあたらない卵も自己主張しているように感じられる。
三首目。運動会のとき空に飛ばされる風船は、勝手に上がるのではなく、子供らのてのひらに押し上げられるという把握がユニーク。空へ空へのリフレインも効いている。

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