気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

パンの耳⑤

2022-01-29 13:12:03 | つれづれ
いっさいを語ることなく一隅を照らしし人なりこどもの目にも
弓なりに海に沿いつつ石垣の家並みまばらになりてゆくなり
(ごてんまり 木村敦子)

雪は雨、雨は雪、ふりこみたいにくりかえしやがて手のひら ああ
少しずつ朽ちてゆくのを受け入れず真白のままで逝く夏椿
(水に還る 紀水章生)

薄ら陽の斜めに差し込むその日より秋とはなりぬ尾花なでしこ
一筋を違へし道の路地奥にアナベル咲きて白く寄り添ふ
(つぶさぬやうに 乾醇子)

「近くに川があるのですか」と訪れた人のことばに流れだす川
映像の焚き火に見入ってしまう夜 それはわたしの火ではないのに
(空の差し色 岡野はるみ)

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松村正直さんのカルチャー教室から発展した「パンの耳⑤」が出た。
参加する人の顔ぶれが徐々に変わりつつ、それぞれが連作を用意するなかで確実に力をつけておられるのがわかる。嬉しく思う。

木村敦子さん 
曾祖母の生家を訪ねる一連。目立つことのなかった曾祖母の人生、人柄、海辺の村のさびれた様子が伝わる。

紀水章生さん 
すこし抽象的な詠みぶりで、チャレンジ精神を感じる。わざとよみにくくする工夫があったり、端正な歌があったり、多彩。

乾醇子さん 
安定した力のある正統派。ここには上げなかったが「新卒」「唐揚げ弁当」などの言葉に作者の生活が滲む。

岡野はるみさん 
色彩感のある連作。発想が愉快。ものの見方が一方的でなく、逆から見るところに膨らみと面白みがある。

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