気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

LIGHT 永田愛 青磁社

2022-01-16 23:52:10 | つれづれ
はつなつのみじかい午睡の外がわに雨降っていて雨の音する

重荷にはならないようにすこしだけ近い未来の約束をする

ひとすじの水に洗えりぎんいろの蛇口のしたに手を差しいれて

向きあわず話しはじめるほうがいい大事なことであればあるほど

分銅の重さすこしも疑わず測定結果に100.0グラム(ひゃく)を書くこむ

葉柳をはなれわたしのもとへ来る螢(ほうたる)これは来世のわたし

歩かなくなった、あるいは歩けなくなった児のくつ うすももいろの

そっくりで笑ってしまう テーブルに置かれたものはわたしの足だ

九連休明けのからだは生温く釦とボタン穴が遠いよ

三人の甥っ子どの子もわたしの子と思う遊びを一生(ひとよ)続けむ

(LIGHT 永田愛 青磁社)

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塔短歌会の永田愛の第二歌集。やさしさゆえに、人との距離を保って暮らしている作者の姿がわかる。相手に深く踏み込んで、相手に迷惑をかけてしまうことを意識しているのだろう。分銅の重さすこしも疑わず、の歌。実は疑っているけれど、疑いはじめるとキリがなく物事が前に進まないから、という思いやりではないか。自分を客観視せざるを得ない作者の心根が切ない。明るさと寂しさの共存。

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