はつなつのみじかい午睡の外がわに雨降っていて雨の音する
重荷にはならないようにすこしだけ近い未来の約束をする
ひとすじの水に洗えりぎんいろの蛇口のしたに手を差しいれて
向きあわず話しはじめるほうがいい大事なことであればあるほど
分銅の重さすこしも疑わず測定結果に100.0グラム(ひゃく)を書くこむ
葉柳をはなれわたしのもとへ来る螢(ほうたる)これは来世のわたし
歩かなくなった、あるいは歩けなくなった児のくつ うすももいろの
そっくりで笑ってしまう テーブルに置かれたものはわたしの足だ
九連休明けのからだは生温く釦とボタン穴が遠いよ
三人の甥っ子どの子もわたしの子と思う遊びを一生(ひとよ)続けむ
(LIGHT 永田愛 青磁社)
*************************************
塔短歌会の永田愛の第二歌集。やさしさゆえに、人との距離を保って暮らしている作者の姿がわかる。相手に深く踏み込んで、相手に迷惑をかけてしまうことを意識しているのだろう。分銅の重さすこしも疑わず、の歌。実は疑っているけれど、疑いはじめるとキリがなく物事が前に進まないから、という思いやりではないか。自分を客観視せざるを得ない作者の心根が切ない。明るさと寂しさの共存。
重荷にはならないようにすこしだけ近い未来の約束をする
ひとすじの水に洗えりぎんいろの蛇口のしたに手を差しいれて
向きあわず話しはじめるほうがいい大事なことであればあるほど
分銅の重さすこしも疑わず測定結果に100.0グラム(ひゃく)を書くこむ
葉柳をはなれわたしのもとへ来る螢(ほうたる)これは来世のわたし
歩かなくなった、あるいは歩けなくなった児のくつ うすももいろの
そっくりで笑ってしまう テーブルに置かれたものはわたしの足だ
九連休明けのからだは生温く釦とボタン穴が遠いよ
三人の甥っ子どの子もわたしの子と思う遊びを一生(ひとよ)続けむ
(LIGHT 永田愛 青磁社)
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塔短歌会の永田愛の第二歌集。やさしさゆえに、人との距離を保って暮らしている作者の姿がわかる。相手に深く踏み込んで、相手に迷惑をかけてしまうことを意識しているのだろう。分銅の重さすこしも疑わず、の歌。実は疑っているけれど、疑いはじめるとキリがなく物事が前に進まないから、という思いやりではないか。自分を客観視せざるを得ない作者の心根が切ない。明るさと寂しさの共存。