気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

耳の伝説

2008-01-04 00:03:38 | つれづれ
塵かすかつきたるメガネ冬の陽に見て来しもののよごれふきとる

夜のそこひに沈みゆくごと風聞けば父の巨きな耳の伝説

サイモンとガーファンクルの髪うすくなりしを見つむ夜の画面に

仰向けになりておもえりわが年齢(とし)に父はいかなる夕日を見しや

団栗の独楽ころがせば陽の底に昨夜(きぞ)の瞋(いか)りはほそき炎(ひ)となる

向日葵のかげをこえゆく三輪車君だけの道いつまでもこげ

(小高賢 耳の伝説)

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柊書房の小高賢作品集から。
作者四十歳のときの第一歌集。講談社の編集の仕事を長くしていた人で、会社での会議など、仕事の難しさを詠んだ歌にもこころ惹かれた。会社員として働いていても、家族の一員であり、目線はいつも父、母、妻、子へ注がれている。むつかしい言葉やテクニックに走ることなく、わかりやすく真っ直ぐに読む人のこころの届く歌。

会社とは男の生の何もかも奪ふ処ぞ そののち怖し
(近藤かすみ)


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