気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2005-08-15 22:04:53 | 朝日歌壇
死ににゆく機に帽ふりき残されし夏のつづきの夏にまだいる
(市川市 藤樫土樹)

どうしたらいいのだろうというような鳥取砂丘のわれの足あと
(東京都 松井多絵子)

黒ゼリー涼しき震え銀の匙息子娶らず娘の嫁さず
(名古屋市 藤田恭)

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終戦後六十年。テレビや映画新聞で知ってはいるものの、もうひとつピンと来ない。私に戦争のことを語る肉親はいない。父は戦争のことを語らない人だった。鳥取にいたということを聞いた気がするが、かすかな記憶。母は淡路島に疎開していたらしい。

一首目。特攻隊の出撃を見送った人の歌だと思う。上句の過去形と下句の現在形の対比が歌を強くしている。二回出てくる「夏」の一回目は過去、二回目は現在。夏の重なりも強い印象を与える。

二首目。砂丘の果てしなさが生き方の不安を象徴している。

三首目。ゼリーの震えと息子、娘の結婚とはなんの関係もないのだが、作者はそのことが常に頭にひっかかっているのだろう。母親にとって、子供の結婚はその後の人生を左右することが多く、やはり気になること。そして、子供を持たない女性も、もし子供がいたらと、心にひっかかるものらしい。女はどちらにしても損?。意識を変えるしかない。「娶る」「嫁す」という言葉の選択も実はピンと来ないのだが、いろんな意味でこの歌に気持ちがひっかかった。


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