気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人11月号  十一月の扉

2010-11-15 23:08:17 | 短歌人同人のうた
われに向き椅子のあるなり慕はしき気配をたたへ夜をむきあふ

子を持たぬわれも乗るらむ風の日のサリンジャー忌の回転木馬

(澤志帆 さよならサリンジャー)

寝転びてタバコの煙を見てゐたりこの世のほかに去りゆくものを

手前からぺらんぺらんと夕闇をヘッドライトが剥がしゆくなり

(倉益敬 サマータイム)

収穫はキュウリが五個と茄子が五個その単純を今朝は喜ぶ

老病死左様なことを考える齢(よわい)となるをカラスが笑う

(谷口龍人 いのち)

孤育てと言へばさうかも知れぬ老い日傘くるくる廻しつつゆく

数十台自転車並ぶ売場にて十秒ほどが妙にさみしい

(明石雅子 十秒ほどがさみしい)

******************************

短歌人11月号、十一月の扉から。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (今月の高澤さんの作品は)
2010-11-16 04:36:14
とてもいいとおもいました。ずっと前からいいものをもっているな、とおもっていましたが、さすがです。
 生い先短い身、自分も頑張らねば、とおもわされた作品でした。
 「白水社ピカソの表紙のサリンジャー祖父の午睡の胸で上下す」や「秋の夜の雲の微光に目
守(まも)られて勤め帰りに日付けをまたぐ」が特にいいし、1,5,6首目もいいのではないでしょうか。
 高澤さん、あんまり上手くなり過ぎないでくださいね。
返信する
Unknown (かすみ)
2010-11-16 09:23:42
澤さんの場合は、どれもいいので、どの歌を選ぶか悩みました。青春との別れといったテーマかと思ったので、この二首を選びました。

下手なら上手くなってくれ、と言う・・・?。うまければ、上手くなりすぎるなと言う。
困りましたね。

返信する
短歌人11月号 十一月の扉 (teruo)
2010-11-17 08:36:04
どの作品をえらぶかは、ひとそれぞれの精神史・感性にかかわることですし、それさえそのときの気分のありようによっても変わるでしょう。なおかつあなたの眼は、客観、普遍性をそなえておられるようにおもいます。ご存分な選歌とご意見を…。
返信する
Unknown (かすみ)
2010-11-17 16:15:48
teruoさま

ありがとうございます。
自分の気に入った歌の「おすそ分け」みたいな気分でセレクトしています。
返信する