気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

やさしい鮫 松村正直歌集

2006-09-08 21:21:36 | つれづれ
∞(無限大)の瞳となって風船の最後の点を見つめる子供

幸せを何度も自分に言い聞かす君はさびしい半島である

子の小さき二枚の耳を洗いおりかなしき羽根のような耳たぶ

子が乳を飲まなくなりし寂しさというを聞けどもついにわからず

ようやっと昼寝せる子のかたわらに残る虫食いだらけの時間

(松村正直 やさしい鮫 ながらみ書房)

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松村正直氏の第二歌集。子供さんが生まれた時期の歌が多く、父親として子育てに深くかかわる作者のすがたに感心した。会社で仕事してたら、子供が大きくなっちゃったというどこかのお父さんとは違う。実感が表れている。



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9 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-09-09 05:34:16
松村さんの短歌は、一読すると浮遊感みたいなものを感じる、そんな不思議な文体をしています。

なおかつ、大変味わい深い作品が多い歌人ですね。



あなたとは遠くの場所を指す言葉 ゆうぐれ赤い鳥居を渡る



これはとても素晴らしい一首。後世に残したいと思うほどです。
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Unknown (ふじわら はるゆき)
2006-09-09 10:57:46
彼の歌の表現は師ともいうべき河野裕子氏の影を色濃く感じさせるものがある。ここに掲載された歌は佳作かと思う。慢心することなく淳に成長したら秀作を残すだろう。今は彼は成長過程にある。
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Unknown (森雅彦)
2006-09-09 19:13:30
俵万智さんの文体、内容にも少し似ているかと思われます。

とりわけ『プーさんの鼻』と同質の、失った物と得た物へのとまどいみたいなものが、少し。



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Unknown (かすみ)
2006-09-09 19:39:54
以前、ネット上で、松村正直さんのことが京都新聞で取り上げられたことを知り、その記事のコピーを送って欲しいと松村さんにお願いしたところ、歌集まで送っていただきました。そのご縁でダーツを購読していました。第一歌集『駅』も再読したいです。子供をうたうという点で、俵万智さんと共通点がありますね。
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Unknown (森雅彦)
2006-09-10 03:59:27
いいなぁ。そんな交流。

若手歌人では、屈指の実力をもった松村さんですから、羨ましいですよ。   



松村さんは各地を渡り歩いたことで有名ですよね。

そんな彼が家庭を持ち、放浪できなくなったことによる一抹の諦念のようなものが、作品から感じられました。(間違いでしょうか?)

俵万智さんはシングルマザーになられて、



もう会わぬと決めてしまえり四十\で一つ得て一つ失う我か



という歌を詠まれました。振り幅こそ違えど、僕には二人の揺らぐ気持ちが重なって見えたのです。

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Unknown (かすみ)
2006-09-10 20:44:41
森さん こんばんは。

だれでも、もしあのときああしていなかったら…という思いはあるんじゃないですか。それをどう言葉に残すかが課題です。
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Unknown (森雅彦)
2006-09-11 00:08:06
そうですよね。

詩とはおしなべて、悲しみをうたうものですよね。
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お礼 (松村正直)
2006-09-12 21:45:00
このたびは、歌集『やさしい鮫』をお読みいただき、ありがとうございます。ブログを拝読して、たいへん嬉しく、また励まされました。これからも毎日こつこつ歌を詠んでいきたいと思います。



来月には、また「短歌人」と「塔」の合同歌会がありますね。お会いできるのを楽しみにしています。
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Unknown (かすみ)
2006-09-12 23:35:25
松村さん こんばんは。

歌集にタンメンの歌もありました。あれからもう一年ですね。私も、読みも詠みもがんばらんとあかんな・・・と思いました。

これからもよろしくお願いします。
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