気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-03-09 19:07:16 | 朝日歌壇
雛の間に父母の遺影と眠る夜は頭上の星も美しからむ
(枚方市 鍵山奈美江)

人の手に手を添えたまま水を飲む猛火を必死に耐えたコアラは
(城陽市 山仲 勉)

授乳しつつ赤子の額に触るる娘(こ)の細き指さへ母となりたり
(福島市 飯田輝男)

****************************

一首目。飾られている雛人形は亡くなったご両親が作者のために用意されたものだろう。美しい雛人形とご両親の思いに守られて眠る作者の穏やかな気持ちが伝わってくる。頭上の星までおもいを馳せていることで、スケールが大きく新鮮な歌となった。
二首目。オーストラリアで遭った山火事のときの映像から作った歌。火事に遭ったコアラは人間になついているわけではなく、ただ水を飲みたい一心だったのだろう。二句目の「手を添えたまま」の「手」はコアラの前足なのだろうが、手で十分通用するし、その方が自然に感じられる。
三首目。娘さんが母となったということは、作者が祖父になったということ。しかし実感として、身近な娘が母になったことにまず感動がある。孫とせず赤子と表現したのがよい。また細い指から、これからはじまる娘の苦労を思いやる気持ちが伝わる。



最新の画像もっと見る