酔いて来し洗面台の冬の地図鏡のなかで割れている父
かくれんぼの鬼のままにて死にたれば古着屋町に今日もくる父
つむりたるわが目蛍となりゆきて夢に情死の母を見にゆく
セールスマンの冬のソフトにはさまれし家族あわせの母が一枚
履歴書に蝶という字を入れたくてまた嘘を書く失業の叔父
目つむれば夜のプールにうつりいるわれの老後と一本の藁
(寺山修司 月蝕書簡 岩波書店)
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寺山修司の短歌は映像的なものが多い。セールスマンの歌は、映画の一場面のようだ。
一首目は「鏡のなかで割れている父」というフレーズが魅力的。また「かくれんぼの鬼」のような既視感のある言葉がよく出てくる。
五首目にもあるが、これらの歌は嘘と言えばみんな嘘なのだ。
享年四十七歳は若いが、年取った寺山修司は想像できない。早世であっても本人にふさわしい年齢であったのかもしれない。
かくれんぼの鬼のままにて死にたれば古着屋町に今日もくる父
つむりたるわが目蛍となりゆきて夢に情死の母を見にゆく
セールスマンの冬のソフトにはさまれし家族あわせの母が一枚
履歴書に蝶という字を入れたくてまた嘘を書く失業の叔父
目つむれば夜のプールにうつりいるわれの老後と一本の藁
(寺山修司 月蝕書簡 岩波書店)
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寺山修司の短歌は映像的なものが多い。セールスマンの歌は、映画の一場面のようだ。
一首目は「鏡のなかで割れている父」というフレーズが魅力的。また「かくれんぼの鬼」のような既視感のある言葉がよく出てくる。
五首目にもあるが、これらの歌は嘘と言えばみんな嘘なのだ。
享年四十七歳は若いが、年取った寺山修司は想像できない。早世であっても本人にふさわしい年齢であったのかもしれない。
昔は、○○コースと○○時代がありましたね。
でも私は詩の投稿など思いも寄らないことでした。
当時はグループサウンズに夢中でした。
いま思えば、あれもこれも歌ですが、ミーハーでわかりやすいものが好きでした。いまも歌謡曲的とときどき言われています。
でしたね。小学六年のときの、教科書でした。
はじめ読んだときは、「この字余りがイヤ。」って思いながら読んだ覚えがあります。
いまでは、もちろん、愛唱歌のひとつですが。
しかし、短歌をはじめて、いちばんショックだったのは、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」が富沢赤黄男(だったっけ?)の俳句のコラージュだと知ったときでしたね。
このことを歌人との飲み会なんかで話すと、みなさん「寺山は、あれでいいんだよ。」っていうんですけど、やっぱり残念です。
ちなみに前日の「タバコのにほひ」は、これを踏まえていらっしゃるんですね。
こう言ってはみても、やはり、語り尽くせぬ魅力が、寺山修司にはあるようです。
私は、学生時代の国語の時間に短歌を勉強した記憶がほとんどありません。遠い昔のことだからでしょう。
次回の短歌人関西歌会の研究会で、『月蝕書簡』が取り上げられるということで、図書館から借りて読みました。寺山修司は、アンソロジーなどで読んだ程度でしたが、最近読み始めたという感じです。